大手資源商社の好業績に陰り-原油のボラティリティー低下で
(ブルームバーグ): 世界の大手資源商社にとって、原油取引を取り巻く環境が一段と厳しくなっている。過去数年の大きな市場のイベントがインパクトを失い始めていることが背景にある。
この減速はあらゆる場所で感じられている。スイスの資源商社グレンコアや同業のガンボー・グループでは、利益が減少。ヘッジファンドを率いるピエール・アンデュラン氏は、原油取引から撤退し、銅やカカオを選好している。業界の大手企業は依然として利益を上げているものの、もはや2020年以降に記録していた巨大な数字ではなくなっている。
その当時は、原油価格が一時的に下落に転じていた。石油輸出国機構(OPEC)が高水準の供給を維持していた時期に、新型コロナウイルス感染が拡大し、需要が後退したためだ。それから2年足らず後に、ロシアのウクライナ侵攻を受けた原油先物の急伸などで、大きな利益がもたらされた。
しかし現在では、これらの問題を市場が既に吸収したため、取引の生命線であるボラティリティーが低下している。
マーキュリア・エナジー・グループの元原油責任者で、現在はレブメットUKの石油部門を率いるカート・チャップマン氏は、「今年は明確な現物取引の好機がなかったため、厳しい年となっている」と指摘した。
原油価格は最近70ドル近辺に下落しているものの、今年これまでの変動は、過去数年に比べるとかなり穏やかだ。北海ブレント原油先物は、このままいけば年間ベースで04年以降最も小幅な値動きとなる。一方、市場のボラティリティーの指標は今年に入り、約10年ぶりの低水準を付けた。
一段と厳しい市場環境は既に、これまで発表された企業業績にも表れている。
グレンコアのエネルギー部門は、石油と石炭の取引マージン縮小を受け、24年1-6月(上期)利益が半期ベースで18年以来の低水準となった。同業のトラフィグラ・グループは、23年10月-24年3月期に73%の減益となった。