「戦争が起きたら」北極圏の村にも届いた黄色い冊子
■ロシアを見据えて…
「前回のパンフレットが発行された2018年以降、安全保障状況が悪化していることは周知の事実だ」とボーリン民間防衛相は新版発行にあたり語った。 発行したMSB幹部も「ロシアがウクライナに本格的に侵攻したことは大きな変化。(前版の)2018年も厳しい治安状況だったが、今はもっと悪化している」と2022年にウクライナ侵攻が改訂の主な理由であると語る。 奇しくも、発行の翌日の19日には、ロシアのプーチン大統領が、核ドクトリンを改定する大統領令に署名。核兵器の使用条件を大幅に下げ、直接の戦争当事国以外も核抑止の対象とした。 こうしたタイムリーな時期に新版が発行されたことについて冒頭のヴィデクルさんは、「政府が情勢をしっかり把握して、素早くこうした対応とってくれることは良いことだ」と語る。 スウェーデン国民の間でも今回の新版発行を行った政府を評価する声が多いという。
■「スウェーデンは決して降伏しない」
パンフレットの冒頭では、国民に対して「国民のみなさん 私たちは不確実な時代に生きています。現在、世界の片隅で武力紛争が繰り広げられています。(中略)このパンフレットでは、危機や戦争に備え、どのように行動すべきかを紹介しています。あなたもスウェーデンの緊急事態への備えの一部です」と呼びかけている。 また、「スウェーデンは他国から攻撃を受けても、決して降伏しません。抵抗中止を命じる情報はすべて偽りです」との強いメッセージが目立つかたちで記されているのが印象的だ。 また、「世界的な脅威レベルが高まると、核兵器が使用されるリスクが高まる」として、核の脅威、攻撃に対する備えについても言及している。
■北欧各国でも同様の動き
こういった有事に備える呼びかけは、北欧各国でも行われている。 ●フィンランド 今月16日に「事態や危機への備え」と題する新たな危機管理ガイダンスを発表。 費用と効率を重視してデジタル版のみ作成し、軍事紛争、サイバー攻撃、停電など項目ごとに詳細なマニュアルが掲載されている。寒さの厳しい土地柄、停電時は「窓を覆う。建物の中心部にすべての居住者を同じ空間に集め、ドアを閉めた部屋で過ごす」など寒さ対策も記載されている。 ●デンマーク 「危機に備える」とのガイダンスを今年に入り更新。冒頭に「3日間」と大きな見出しを取り、危機が発生した際、自力3日間を乗り切るための備えを記載している。 ●ノルウェー 「ノルウェーの緊急事態にあなたができること」 戦争や危機などが発生した場合、国民が自力で1週間対処できるよう備えるよう促すパンフレットを作成し220万部を各世帯に配布。缶詰、パスタ、ペットフード、水、マッチ、ろうそく、救急箱、ヨウ素剤などを備えるよう呼びかけている。