指導者人生はまだ始まったばかり(インカレバスケ2024・環太平洋大学 西垂水美桜監督)
両親を見てきた影響か、後輩たちに教えることが好きで、「いつかは指導者に」と思っていた西垂水監督は、新潟アルビレックスBBラビッツで終えた選手生活には未練も後悔も全くない。前十字靭帯を2度も負傷していることから、既にB級コーチライセンスを取得していた2022-23シーズン終了時点でも引退を考えたということだが、それを1年先送りしたのは理由があった。 「Wリーグが2部制になる前の14チームの中で結果を出すことが意味のあることだと思ったんです。そこでキャプテンになって、5勝という目標を達成して、順位も最下位ではなく2コ上げることができて、『めちゃめちゃ自分頑張ったな』って言えるくらいやりきりました。最後はトヨタ紡織にあんな勝ち方もして、『もう悔いはない!』って。本当に楽しかったです」 現役を退いて間もない分、コートサイドに立っていると「自分が選手だったらこの場面でどうプレーするか」ということは当然考えてしまう。人によっては、自分がコートに出ていきたくなることもあるかもしれない。ただ、西垂水監督も「指導者目線と選手目線は違う」ということはよく理解している。例えば「あ~、あそこが空いてる……ここはパスだろ…」と思うことは実際にあるそうで、「言っておくだけでも違うと思うからそれは言います」ということだが、「選手側の見方も指導者側の見方もできて、面白い1年でした」と言えるところは、かねてから指導者を志していたがゆえのバランス感覚なのだろう。 決勝トーナメントは初戦で大阪体育大に屈し、ベスト8進出という目標には届かなかったものの、縁あって環太平洋大というチームにたどり着いた果てに、大学としての最高成績を残すことができた。「みんながここまでついてきてくれるとは思ってなかった」と西垂水監督は言うが、指導者人生1年目にしてしっかりと選手たちの心をつかんだからこその結果だ。この環太平洋大というチームで、西垂水監督が理想とする指導者像も、チームが目指すべき姿も明確になっている。 「貫禄もないので、どこに行っても学生に見られちゃうんですよ(笑)。私としては良い意味でそのままでいて、学生たちともフレンドリーに楽しく、でもチーム一丸になってやるべきときはやる、そういうチーム作りをしたいです。地方大学なので、関東の大学に勝ってベスト8にいけるように、その積み重ねを一からやりたいと思ってます。『環太平洋大学といえば』って西日本でも当たり前に名前が出てくるようなチームにしたいですね」 全国上位にのし上がっていく過程では、大なり小なり困難が伴い、力の差を思い知らされる試合もあるだろう。だからこそ、指導者人生を歩み始めたばかりの西垂水監督は、学生たちとともに成長し続ける。 「とにかく、悪い流れでも私は前しか向かない。下を向いても仕方ないから、どれだけやられようとしっかり前を見ていくよって、そういう声はかけていきます。そこは新潟で学んだキャプテンシーの部分。コミュニケーションを取りながら、40分間諦めない、戦い続けるということを学生たちと一緒に、自分もやっていきたいです」
吉川哲彦