「想星のアクエリオン」のすべて キャラデザ決定の舞台裏から特殊な制作手法まで、糸曽監督にインタビュー
「波が合体している」――舞台としての江の島
――感情がテーマというのはよく分かりました。糸曽監督が物語の舞台としての江の島に感じる面白さについて、具体的なキーワードを頂けたりしますか? 糸曽:まず海ですね。河森さんと江の島へロケハンにも行ったのですが、シーキャンドルに登ったときに河森さんがぶつかり合う波を見て「波が合体している……」とぼそっと仰ったのが強烈に印象に残っています(笑)。「名言だ……ホントに面白い方だな」と。 ――(笑)。でも、河森さんの「波が合体している」という言葉が、今回の作品のインスピレーションの元になっているのかもしれません 糸曽:そうですね。そういう意味では、河森さんの企画書を綿密に読み込んだ村井さんが、江の島の海や波の要素を物語に巧みに取り入れてくれています。例えば、1万2000年前に滅んだ環太平洋の古代文明の末端部分が江の島であり、そこが海に沈んでアクエリオンが発見された、という裏設定もそうです。波=海のエネルギーとアクエリオン、そして人間の感情が、複雑に絡み合っているんですね。 今回、1クールという限られた時間の中では、これらの設定や世界観を全て描ききることはできませんが、より深く理解したいという方のために、公式サイトにプロダクションノートを掲載する予定です。そこでは、今回お話できなかった設定や裏話なども詳しく解説していきますので、楽しみにしていてください。 ――江の島は映画やアニメなどでも頻繁に登場する場所なので、視聴者も既に江の島の風景や雰囲気を知っている場合が多いですよね。世界観の説明に多くの時間を割く必要がなく、限られた話数の中でも物語を効率的に展開できるというメリットはないでしょうか? 糸曽:おっしゃる通りです。さらに今回は1万2000年前の物語も、各話少しずつ描写されます。そこで何が起こったのか、そしてそれが現代にどのような影響を与えているのかを、視聴者に理解していただけるように工夫して作っているので、注目していただきたいですね。 例えば、1万2000年前の江の島にも、神の化身である大蛇が登場します。これは、現代の江の島に伝わる龍神伝説と深く関わっており、過去と現在が密接につながっていることを示唆しています。過去の物語を通して、現代の江の島がひも付くような構成になっています。