「想星のアクエリオン」のすべて キャラデザ決定の舞台裏から特殊な制作手法まで、糸曽監督にインタビュー
河森氏が語った「合体」の意味
――河森さん発の「感情」というテーマですが、まず「感情」がテーマになった、その理由が語られたりはしたのでしょうか? 糸曽:アクエリオンという作品、私自身楽しく見てきましたし、何でもありで好きなんですが、すごく気になっていることがあって、それを監督にぶつけてみたんです。「合体」シーンはなぜあの様に扇情的な表現になったのかと。 でも河森さんから帰って来た言葉は「合体というのはそういう意味ではない。あれはいろんな人々の『感情』が入ってきて、自分では気付けなかった事柄が埋まっていく、その様が気持ちいいんだ」というものでした。そのお話を聞いて、なるほど!だったら今作ではもっと分かりやすく、感情の一部――例えば「怒り」とか「愛情」とか、そういったものが欠けている子どもたちが集い、合体することで欠けている部分を補う――そんな作品を作れたら良いなと思いました。 ――これまでの話を整理すると、企画の段階で河森さんから「感情」と「江の島」というテーマが提示されていて、糸曽監督もそのテーマに魅力を感じたということですね。さらに、アクエリオンの「合体」は、物理的な合体ではなく、感情の合体であるという河森さんの考えを理解した上で、今作ではその点を明確に打ち出すことになった、という理解でよろしいでしょうか? 糸曽:はい、その通りです。江の島は、古来より龍神や3人の女神(弁天)が祀られているなど、神話の舞台として非常に興味深い場所です。「感情」というテーマとの親和性も高く、物語の舞台として最適だと感じました。 また、私自身は「少年ジャンプ」のような、分かりやすく熱いストーリー展開が好きなので、「感情が欠けている→合体によって感情が満たされる→新しいことを知り成長する」というシンプルな構造を意識しました。その上で、キャラクター造形においては、「生まれつき特定の感情が欠けている」という設定にすることで、よりドラマティックな展開を生み出せるのではないかと考えました。