ホンダと日産、経営統合の死角…本田宗一郎が「恐ろしい」と語った魔物とは?
● 伝説の経営者がもし生きていたら… 2社の苦しい状況は、業界でトップを走るトヨタ自動車と比べると、よりはっきりとわかる。トヨタは2024年3月までの1年間で、過去最高となる5兆3529億円もの営業利益を記録した。4~6月の3カ月間でも1兆3084億円の利益を上げ、記録を更新し続けている。 車の検査に関する問題で一時的に生産を止めたり、リコール(不具合による無料修理)の対応があったりしたにもかかわらず、為替レートの変動がプラスに働いたことや、コストを減らす努力が実を結び、高い収益を保っているのである。 トヨタは従業員の育成や、電気自動車、水素を使う車、自動運転やAIなど、未来の技術への投資も積極的に行っている。これからの時代の新しい車社会に向けて、着実に準備を進めているのだ。 そんななか、日産とホンダが会社をひとつにまとめようとする今回の決断は、まさに会社の存続をかけた重要な選択と言えるだろう。 ただし、経営統合へ向けた協議は、日産と深い関係にあるフランスの自動車メーカー「ルノー」の方針次第で、なくなってしまう可能性もあると言われている。 以前は日産との提携関係によるシナジーを見込んでいたものの、配当が減っていく日産とは距離感があるとされており、日産の将来を気にするよりも日産株が高値で売れれば売却先はどこでもいい、という判断があってもおかしくない。 ホンダの創業者である本田宗一郎は、日本の自動車産業を代表する伝説の経営者だ。 貧しい農家に生まれ、尋常小学校卒業後、自動車修理工として働き始めた。1936年にアート商会(のちの東海精機)を設立、1948年にホンダを創業。「技術で勝負する」という信念のもと、二輪車から四輪車まで、独創的な製品開発で世界的企業へと育て上げた。 経営者でありながら、終生エンジニアとしての視点を失わず、「理論だけでなく、現場の経験を重視する」という哲学を貫いた人物である。本田がもし生きていたらなら、両社の統合の末にどんな未来を描くだろうか。