鳥の雌雄関係:進化が作り出した利己的なオスとメス(濱尾章二/行動・生態研究者)
ツバメのヒナが巣から落ちているのを見たことがある方もいるだろう。ツバメではオスがよその巣のヒナをつついて殺すことがある。同様の子殺しはいくつもの種で観察されており、メスを得られない独身オスが既婚のつがいを離婚させ、メスの再婚相手になるための行動と理解されている。 ヒメアマツバメでは再婚が起きた後に子殺しが起こる。オスでもメスでも、つがいとなった相手に先妻(あるいは先夫)との間に設けた子がいるとそれを殺してしまう。その子が自立するまで待つよりも、子育てを中断させて早く自分との繁殖を始められるようにするほうが有利だからだ。子殺しが種の繁栄に結びつかないことは明らかであり、集団の繁栄とは関係なく個体にとって有利な性質が進化することがわかる。 特別展「鳥」では、多くの種の剥製が展示されているので、いろいろな種についてオスにだけ発達した派手な飾りを見ることができる。「それをどのように使ってメスにアピールするのか」「オスの生存にマイナスになっているのか」などと思いを馳せて見ていただけると幸いである。また、「鳥のひみつ」のコーナーでは繁殖に関する話題を多く扱っている。鳥の雌雄関係を新たな視点から見ていただけると思う。 【濱尾 章二(はまお しょうじ/行動・生態研究者)】 国立科学博物館動物研究部、脊椎動物研究グループ所属。鳥類の行動学、生態学が専門。特に繁殖行動、音声コミュニケーション、認知に関する研究に取り組んでいる。 特別展「鳥 ~ゲノム解析が解き明かす新しい鳥類の系統~」公式ホームページ:https://toriten.exhn.jp/
濱尾 章二(行動・生態研究者)