トヨタのできる社員がやっている、社内外の敵を味方につける「相槌」と「接続詞」の使い方
いまや仕事の多くは、「自分一人の力」だけで成し遂げられるものはありません。自分の部署や部門の上司や先輩、同僚はもちろん、他の部署や部門とも連携しながら取り組むことが求められています。そこで前回に引き続き、森琢也氏の新刊『トヨタで学んだハイブリッド仕事術』(青春出版社刊)から、仕事の成果を最大化・持続化させるために重要な、戦略的に周囲を巻き込むトヨタ流コミュニケーション術について抜粋して紹介します。 ● 意見が合わない相手をも味方に巻き込む話し方 仕事で大きなプロジェクトに取り組むときなど、チームを組んで対応することもあるでしょう。そんなとき、チームの中に自分と「価値観が合わないな」という人がいると、それだけでストレスを感じてしまいます。相手の意見に、つい「でも」や「しかし」「そうなんですけど」と反論したくなってしまうこともよくあります。 特に仕事の場面では“合わない”相手ともうまくやっていかなければと思い、相手の話を「聞き入れよう」、相手のことを「少しでも受け入れよう」と無意識に頑張ります。そのせいか、「そこは納得できるが、でも、しかし、ちょっと待てよ……」と考えてしまい、いわば「心理的なアレルギー反応」を起こしてしまう場面も生まれます。 こうした価値観の異なる人は、極力避けてやり過ごしたいものですが、同じ職場やチームのメンバー、重要な取引先相手であればそうはいきません。むしろ、そんな人でさえも自分の味方に引き込んでしまうような人間関係を構築することが大切です。 実際にトヨタグループで仕事ができる人たちは、こういったコミュニケーションがとても得意でした。具体的に、どのように対処していたのか? 私が上司や先輩から学んだポイントは、意見や価値観の異なる相手の話は「受け入れる」のではなく、「受け止める」、という対応です。
● 「そうなんですね」話法で相手を「受け止める」 例えば、職場の新人の育成法について、考えや価値観の異なる人が、延々と自身の考えを主張しているシーンを想定してください。 相手の話を「受け入れる」ということは、「その通りですね」と同意や賛同、共感を示すことです。真面目な人ほど、相手の話を「受け入れよう」と取り組む方が多いのですが、無理して「(自分と異なる考えを)受け入れよう」とすればするほど、心の中で拒絶反応が起きます。自分と異なる意見や考え(=異物)を無理やり取り入れようとして、「いや、やっぱりこの考えには同意できない」「そこには賛同できない」となり、「心理的なアレルギー反応」が生じるわけです。そして、つい「でも」「しかし」という反論が口に出てしまい、対立を生んでしまいます。 一方、相手の話を「受け止める」とは、相手の話をきちんと聴くものの「無理に同意や賛同」はしません。同意や賛同をしない代わりに「そうなんですね」と相槌を打つのです。 むやみに敵を作らず、戦略的に人を巻き込み、価値観の合わない人も自分の味方にしてしまう、そんな人間関係を構築するためには、「受け入れる」以外に「受け止める」の選択肢を持ち、場面に応じて使い分けることがおススメです。 ビジネスの場面であっても、常に相手の意見や考え方を100%「受け入れる」必要はなく、場面に応じて「受け止める」だけでも、相手は「ちゃんと話を聴いてくれた」と安心し、議論を前に進めることができます。 とはいえ、ビジネス上、どうしても相手に反論したくなったり、相手の誤解、間違いを指摘せざるを得なかったりするときもあるでしょう。そんな場面でもやはり、対立を生み出す「でも」や「しかし」といった「逆接の接続詞」は避けたほうがいいでしょう。 では、「逆接の接続詞」を使わずにどう対処すればよいのでしょうか?