トヨタのできる社員がやっている、社内外の敵を味方につける「相槌」と「接続詞」の使い方
● 「でも」や「しかし」は使わずに「そのうえで」話法を使う 社内で部署間の主張が異なり激論が交わされる中で、コミュニケーション力に長けた営業の先輩が使っていたのは、「そのうえで」や「さらに」という接続詞でした。 話の流れからすると、「そのうえで」や「さらに」といういわゆる“順接の接続詞”は日本語の文法として誤りですが、相手にむやみに反論してしまうことを避けるために、あえて「そのうえで」や「さらに」といった接続詞を使っていたのです。 例えば、あるお得意先から急な追加注文の依頼が来たとします。営業部としてはなんとか要望に応えたいと思っても、製造部門のトップは「追加生産は無理」の一点張りです。 そんなとき、「(無理なのはわかった)でも、お得意先は強く要望している。じゃあ、どうするんだ? 今後の受注に影響が出てもいいのか?」と言い返すとカドが立ちます。 そこで「(無理なのはわかった)そのうえで、お得意先は強く要望をしているわけですし、どのような対応案があるでしょうか?」と語りかけると、相手の受け取り方も違ってくるのです。 ● 理屈で動かない人は「○○」で動かす 「職場で新たに定めた業務ルールを徹底したいのに、どうしても守ってくれない同僚がいる」。こうした悩みを耳にすることはよくあります。 「みんなで決めたルールなのだから守って当然だ」と正論をかざしても、「強引な説得」になり逆効果になってしまうこともあります。 こうしたケースでは、ルールを守らない人にもその人なりの理由や思いがあるものです。 「論理だけで人は動かない」と考えて感情面に目を向け、「感情を揺り動かす」ことで人を納得させて行動を改めてもらえないかを考えましょう。
● 正論やルールを押し付けずに「感情を動かす」には? 相手の感情を動かすには、いくつかポイントがあります。 まずは、協力を得たい相手の興味・関心に注意を払い、その人にとって「譲れない」価値観や対象とはどのようなものかを考えてみましょう。 例えば、大切にしているものとして家族や尊敬する人、趣味、信念や信条、実際の経験や体験に基づいた思いなどに焦点を当ててみるのです。そして、相手の感情に働きかける質問を考えてみます。 例えば、私が新入社員研修の講師を務める際は、「ビジネスマナーとしてこうするべき」と大上段で教えることは避けます。 まず新入社員のみなさんに「これまで物を買ったり、サービスを受けたりした際に嫌な思いをした経験を教えてください」と尋ね、あれやこれやエピソードを挙げてもらいます。「それは嫌だね」「許せないね」と言い合ったうえで、「みなさんはこれから消費者から提供者に変わります。自分がされて嫌なことは他人にしないためにどうしたらいいでしょうか?」と問いかけます。 人は正論や理屈だけでは動かないものです。一方で、自分がさんざん「嫌だった!」「あれは許せない!」と語ったことについては、「逆の立場で同じことはできない」という感情になります。