「トイレに行く振りして帰るのが普通」沖縄の飲み会では途中退席で「お先に失礼します」と言わない理由
離島ではすこし違うルールも。楽しく飲むのが一番の目的
ただ、こうした慣習も沖縄の地域や職場によって違ってきます。厄介なことですが、沖縄でビジネスをするなら、それを見極めるのも、重要なエッセンスと言えるでしょう。 ある離島では、やはり途中退席の際に「お先に失礼します」などと言おうものなら、「せっかく盛り上がっているのに、おまえごときが、お先に失礼しますだと?」などと怒鳴られてしまいます。また別の離島では、そっと帰ってしまったら、逆に「挨拶もせずに帰るとは、礼儀知らず!」と罵られることになります。本当に難しいものです。 沖縄本島だったら、大抵の場合、だらだらと飲み続けているので、適当なときに、すっと帰るのがいいでしょう。誰かが気づいたとしても、「あ、帰ったんだな」で済んでしまいます。 こうやって比較すると、つくづく本土の飲み会、懇親会は大変だと感じます。社員の方々は、開催するまでにスケジュール調整や人数の確認、会場選びでヘトヘトになっているうえ、いざ当日になってトップが遅れようものなら、それまでの場つなぎをどうしようかと頭を悩ませます。 上司が帰らなければ、部下は二次会、三次会まで付き合わなければならなくなるかもしれません。急遽、二次会のお店選びもしなくてはなりません。これでは飲み会、懇親会に出たがらない若い社員が増えるのも当然のことです。楽しいはずが、疲労困憊で仕事の説教までされるようであれば、何も会費を払ってまで参加したいとは思わないでしょう。 沖縄の飲み会や懇親会は、楽しいことが一番なのです。形式重視、礼儀重視だと自社の若い方だけでなく、取引先の経営者にも嫌われてしまうのです。 伊波貢(沖縄進出コンサルタント) 沖縄進出コンサルタント。ブルームーンパートナーズ株式会社代表取締役/CEO。1967年沖縄県生まれ。琉球大学経済学科卒業。沖縄県内初の証券アナリスト。株式会社コスモ証券経済研究所を経て、1996年4月に株式会社沖縄海邦銀行へ転職。その後、株式会社海邦総研の設立に携わり、設立とともに取締役経営企画部長に就任。約11年間にわたり経営に関与する。2015年1月に独立し、現職。沖縄地域経済・産業に関する研究をフィールドワークとしつつ、国や県および、自治体からの各種調査(観光・地域資源・経済波及効果調査など)業務を受託。公的機関支援事業の各種委員、審査員を兼任。地域経済・産業活動のコメンテーターとして新聞、テレビ、ラジオなどにも出演。著書に県内でヒットした『おきなわデータ算歩』(沖縄タイムス社)。琉球王国を建国した尚巴志王の末裔。 協力:あさ出版 あさ出版 Book Bang編集部 新潮社
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