催涙スプレーで反撃、走行電車から飛び降り 捜査3課vs「韓国人武装すり団」の戦い㊤ 警視庁150年
平成初期から中期にかけて、刃物や催涙スプレーを手に日本国内で組織立った窃盗を繰り返す「韓国人武装すり団」が跋扈(ばっこ)していた。刃物でかばんを切り裂き、走行中の列車から飛び降りて逃走するなど、捜査員を翻弄した。しばしば警察官にも凶刃を振るった凶悪集団と最前線で対峙(たいじ)し続けた警視庁捜査3課すり班の「戦い」を、捜査関係者の証言などから振り返る。 ■電車の乗客ら搬送 「逃げるな。止まれ」 平成16年6月、東急東横線田園調布駅。財布をすって逃走した男の一人に、立ちはだかった男性がこう声をかけた。すると男は催涙スプレーを噴射。近くの高級住宅街に逃げ込んだ。警察官が拳銃を発砲するなどして、犯人グループの一人を何とか取り押さえた。 この事件は、武装すり団の凶暴さを広く世間に知らしめた。捜査関係者によると、警視庁の捜査資料に残る最初の事件は2年12月15日。逮捕した男が七徳ナイフを所持していたという。その後も駅で年配女性などが狙われる被害が多発した。 10年12月にはJR埼京線で犯行をすり班捜査員に看破された男が車内で催涙スプレーを噴射し、乗客61人が救急搬送された。18年4月にはJR西日暮里駅で警察官に職務質問された男が構内で催涙スプレーを噴射、乗客27人が手当てを受けた。 埼京線の事件で犯人がとった逃走方法は、捜査員を驚かせた。車両連結部の蛇腹を犯行用の刃物で切り裂き、走行中の車両から飛び降りたのだ。 ■度胸試しに自傷 「あのころのすり班捜査員は体を張っていた」。捜査幹部はこう振り返る。9年1月にはJR日野駅で、男性捜査員がすり師に切りつけられ、刃物はかわしたものの列車とホームの間に挟まれて重傷を負った。 捜査員が見たすり師たちの姿は、想像を絶する荒々しさだった。 捜査関係者の手元に、十数年前に撮影されたというある容疑者の写真が残っている。上半身にいくつも走るのは刃傷だ。「これは自分で入れたもの。度胸を示すために自分で体を傷つける風習があった」(捜査関係者)。 いとも簡単に自分を傷つけられる者こそ、〝気合が入っている〟というわけだ。