AIとGPUの今後を考える 莫大な投資を無駄にしないために 長谷佳明
しかし、今や問題の本質は、AIインフラ投資が壮大な空振りに終わらないかだ。GPUも学習するモデルや、推論する課題なくして、活用は進まない。まるで、休日だけ使われれる自家用車のごとく、開店休業中のデータセンターが世界中で生まれるかもしれない。最新GPUも数年もすれば、“型落ち”になり、投資を回収できない不良資産になりかねない。GPUも必要な量をいかにタイミングよく、獲得し利用するかがカギになる。 AIの最前線は、プロプライエタリモデル(非公開モデル)を開発するオープンAIやアンソロピック、オープンモデルを開発するメタ・プラットフォームズのような企業が主体となっており、以前のように学術研究の場で惜しげもなく、最新動向を披露しあうという状況ではなくなっている。 常に相手に探りを入れて様子をうかがいながら、小出しに必要最低限の情報を共有している状況になっており、極めて見通しが悪い。莫大な投資が無駄にならないように、手の内を明かさないまでも、各社の技術をリードするものらが、互いの最新の開発状況や方向性を共有し、時に協調する“ホットライン”の開設も打ち手の一つとして考えられる。 SAPやオラクルなどのソフトウエアベンダーがあらかじめ、製品のリリース計画をユーザー企業と共有するように、AI企業らも、不確定要素が多いことは承知のうえで開発ロードマップや計画を公開し、信頼性や透明性を醸成する時期が来ているといえるだろう。 (長谷佳明氏・野村総合研究所エキスパートストラテジスト)