AIとGPUの今後を考える 莫大な投資を無駄にしないために 長谷佳明
◇アマゾンはアンソロピックを後押し ただ、他社も手をこまねいて見ているのではなく、例えばアマゾンは、20年12月にAI学習用半導体「Trainium」を発表、23年11月には次世代のAI学習用半導体「Trainium2」を発表するなど、メガクラウドベンダーらは常に戦略をアップデートしている。Trainium2の成熟度が増せば、アマゾンは徐々に自社製GPUへの置換を進めると予想されるが、AMDと同じく、ハードウエアだけでなく、その上のソフトウエアへの投資も重ねて必要になることから、AI市場の成長と顧客ニーズを今後も慎重に見極めた判断が求められる。 アマゾンは12月3日、同社のクラウドサービスの年次イベント「re:Invent」で、数十万のTrainium2からなるAIスーパーコンピューター「Project Rainier」をアンソロピック社向けに開発中であると発表した。かつて、マイクロソフトがオープンAIに専用のAIスーパーコンピューターを構築し、開発を後押ししたように、今度はアマゾンが、オープンAIのライバルであるアンソロピック社の開発を後押しした形だ。この背景には、アマゾンは、2023年9月に40億ドル、2024年11月にも追加で40億ドルと、アンソロピックを戦略的パートナーと考え、継続的に投資し続けている点がある。 アマゾンの自社製GPUもアンソロピックのような超大口顧客がつけば、かなりの規模の安定的な需要となる。アマゾンにとっては自社製GPUの技術を磨く、またとない実践の場となり、それと同時にマイクロソフトに対抗するAIのモデルを獲得できうるなど、一度で二度おいしい“好機”となる。 ◇開発状況を共有する必要性も AIのマーケットの主戦場は、世界中で発表されるデータセンターへの新たな投資が物語るように、GPUやコンピューターのインフラに偏っている。先行投資が吉と出るか凶と出るかは、モデルの“成長”いかんにかかっている。なおもAIのモデルが貪欲に学習し、学習のための演算を必要とし、推論にも相応のリソースが求められるならば、先行投資は、AIの生み出す、新たな知力として社会に還元され、実を結ぶだろう。