辰吉寿以輝が日本5位ランカーに4回TKO勝利で陣営は来年タイトル挑戦言明もカリスマ父は「まだあかん」と待った!
プロボクシングの日本スーパーバンタム級14位、辰吉寿以輝(23、大阪帝拳)対WBOアジアパシフィックバンタム級13位、日本同級5位、中村誠康(27、TEAM10COUNT)のスーパーバンタム級8回戦が17日、大阪のエディオンアリーナ大阪第2競技場で行われ、辰吉が4ラウンド2分30秒、ドクターストップによるTKOで勝利した。1ラウンドに左フックでダウンを奪い、流血させた辰吉はコンパクトなパンチを浴びせ続け、傷口がひどくなったため試合続行不能となった。13戦全勝でランキング上位浮上は確実となり、吉井寛会長は、「来年なんらかのタイトルを狙わせたい」と明言したが、元WBC世界バンタム級王者の父、丈一郎(49)は「まだあかん」とGOサインを出さなかった。ただ1戦1戦確実に成長を遂げており、父譲りの魂を剥き出しにしたファイトは会場を魅了した。来年は世界への足掛かりとなる重要な1年になりそうだ。
左フックでダウン奪う
これが正真正銘のカリスマ遺伝子なのだろう。 1ラウンドのゴングと同時に上位ランカーの中村はプレッシャーをかけて前に出てきた。寿以輝は、左周りのステップを踏みながら左とワンツーで迎え撃ち、まるでスイッチが入ったかのように殴り合いに応じたのだ。ショートの左フックで右目上から流血させると、右ボディを打っておいてから、対角線ブローとなる左フックをテンプルにガツン。中村はドタっと背中からキャンバスに倒れた。タフで売る中村にとってキャリア12戦目にして初のダウン。どうだ!とばかりのドヤ顔で辰吉は、ゆっくりと、ニュートラルコーナーへと歩く。 だが、中村は、立ち上がってきた。まだ時間は1分以上残っていた。ラッシュをかけた辰吉は、中村をグロッキー寸前に、ふらふらにして、さらに右のカウンターも当てたが、パンチが大振りになって仕留めきれない。 「(1ラウンドから)出てくるなとは思った。それだけは意識した。左フック? 手ごたえは十分だったが、(その後)予想以上にパンチに体重が乗っていたので大振りになり過ぎた。相手のダメージを見ながら冷静だったけれどカットで止められるのは、嫌だったし、早く倒そうと思って大振りになった」とは、寿以輝の試合後の回想。 その1分間のインターバルで寿以輝は一度入ったスイッチを元に戻す。 「立て直した。飛ばし過ぎたのでまだ7ラウンドあるなと」 2ラウンドでは、あえて勝負にいかず、下がりながらも、左右のボディを絡めてパンチを上下に散らしショートの左フック、右アッパーをヒットさせていく。 3ラウンドに入ると左ジャブからもう1度、ボクシングを組み立て直した。ワンツーを打って、頭をふって相手のパンチを避けて、またワンツー。美しいコンビネーションブローもあった。途中、中村の流血がひどくなりドクターのチェックが入った。 それでも中村はひるまず前進を続けた。辰吉は、ここでは対抗せず足を使って下がってボクシングをした。ロープを背負う場面も。それは考えがあって“あえて”選んだボクシングスタイルだった。 「下がる練習をしていた。無理に打ち合ってもよかったけど、今後、上にいったら、パンチの強いやつが、なんぼでもいるので。だからパンチはもらっていない」 ディフェンスが課題だった辰吉は、今後のタイトル挑戦を想定し、打ち合い、無駄な被弾をすることのリスクを頭に入れていた。