なぜ今さらF-15!? 「非ステルス戦闘機」を選んだイスラエルの思惑とは 空自にも影響か?
非ステルスの最新鋭機だからこその利点とは?
F-15IAはこれまでのF-15「イーグル」とは異なる新しい戦闘機です。しかし、F-35と比べるとステルス性はなく、敵の防空網や迎撃に対しては脆弱といえます。そのような機体をイスラエルが膨大な予算と時間を掛けて新しく導入する理由は何でしょうか。 その一番の理由はF-35よりも優れた兵装搭載能力にあります。同機はステルス機のために、搭載する兵器を機体内部、すなわちウェポンベイに収納する必要があり、兵装の搭載量には限りがあります。従来機のようにパイロンと呼ばれる懸架装置を使って機外搭載することも可能ですが、その場合にはステルス戦闘機としての能力は低下してしまいます。 一方、もともとステルス機でないF-15IAは機体外部にパイロンを介して各種兵装を搭載することが前提で設計されています。ペイロードとも呼ばれるこの兵装搭載能力は、F-35Aの場合は約8.1tに対してF-15EXは約13tにもなります。また、搭載するミサイルや爆弾も、F-35のようにウェポンベイ収納するためのサイズの制約もないことから大型巡航ミサイルや大質量の爆弾なども運用することが可能で、アメリカ空軍では現在開発中の超音速弾道ミサイルAGM -183 ARRWの搭載も予定しています。 このような多種多様な兵器が搭載できるのも「アドバンスドイーグル」にしかない利点であり、ステルス性を必要としないミッションにおいては、この機体は最新のF-35よりも優れた戦闘機になりうる素養を持っているのです。
既存のイスラエルF-15もアップグレードへ
イスラエル空軍ではF-15シリーズを重要な戦闘機として認識しており、今回発表されたF-15IAの新造機だけでなく、現在も運用するF-15Iのアップグレードも予定しています。 これら機体はアビオニクスやエンジンを改良することで、F-15IA相当の能力を得ることになるそうで、名称もF-15I+になります。アップグレードのための具体的な予定はまだ発表されていませんが、アメリカ国務省は軍需品の有償支援(FMS)として25機分の改修キットの輸出を認可しています。 このようにイスラエル空軍はF-15系列の機体に対する投資と、新造機の導入による今後の長期的な運用も見据えているようです。また、イスラエル空軍では、A型、B型、C型、D型の、いわゆる初期型「イーグル」もF-15「バズ」の名称で運用しており、まさにF-15系統のヘビーカスタマーともいえるでしょう。 前述したようにF-15はすでに初飛行から半世紀以上が経っているため、かつて「世界最強」と言われたその圧倒的な戦闘能力も過去のものになりつつあります。しかし、イスラエルをはじめ日本など世界中の国々で継続して運用されていることを考えれば、最新鋭ではないものの「傑作機」であることは間違いありません。 ちなみに、航空自衛隊のF-15Jについても、一部の機体で能力向上のための改修が予定されています。
布留川 司(ルポライター・カメラマン)