なぜ今さらF-15!? 「非ステルス戦闘機」を選んだイスラエルの思惑とは 空自にも影響か?
ステルス機でないのに大量調達なぜ?
イスラエル国防省は、2024年11月7日にF-15「イーグル」戦闘機の導入契約を発表しました。それによると、同軍はアメリカのボーイング社と25機のF-15IAを52億ドル(約7800億円)で購入するとのことで、契約にはさらに25機を追加で購入できるオプションも含まれているそうです。なお、イスラエルによると、機体は2031年から年間で4~6機のペースで納入されていくとしています。 【画像】兵装モリモリ「イーグル」 正面から見ると一目瞭然! F-15「イーグル」といえば、航空自衛隊も運用しているため日本国内でもよく知られた現代戦闘機の代表的存在です。実戦でも中東戦争や湾岸戦争などに投入され、実戦において100回以上の撃墜を記録しており、一時は「世界最強の戦闘機」と呼ばれたこともあります。 ただ、同機は原型のA型が1972年7月27日に初飛行しているため、すでに50年以上飛び続けているベテラン機で、決して最新鋭とは言えない戦闘機です。しかも、現在ではF-22「ラプター」やF-35「ライトニングII」といった次世代のステルス戦闘機が登場しており、かつて「最強」と呼ばれたその戦闘能力にも陰りが見えています。 また、イスラエル空軍もF-35のイスラエル専用モデルであるF-35I「アディール」を保有しており、非ステルスであるF-15を「いまさら」調達するのは奇妙に思えるかもしれません。 しかし、今回導入されるF-15IAは、見た目は日本で見慣れたF-15Jとよく似ているものの、その中身は航空自衛隊の「イーグル」とはまったく異なった最新モデルなのです。
既存の「イーグル」も大幅改良へ
F-15「イーグル」は対空戦闘を主任務とした単座のA型が原型ですが、後に複座仕様のB型をベースに対地任務も行える戦闘攻撃型が開発されています。そのモデルはF-15E「ストライクイーグル」という名称でアメリカ空軍が採用したほか、世界各国にも輸出され、韓国空軍がF-15K「スラムイーグル」、シンガポール空軍がF-15SG、サウジアラビアがF-15S、イスラエル空軍がF-15I「ラーム」と、各々の名称で採用しています。 このように、輸出によってF-15Eは生産され続けていたのですが、だからこそさらなる改良が施されることになります。それが現在のF-15の最新モデルである「アドバンスドイーグル」で、すでにサウジアラビア空軍がF-15SA、カタール空軍がF-15QA「アバビル」、アメリカ空軍にはF-15EX「イーグルII」の名称で採用されています。 各モデルで仕様は異なるものの、アメリカ空軍が導入したF-15EXでは、AN/APG-82(V)1AESAレーダーやAN/ALQ-250 EPAWSS統合電子戦システムといった最新のアビオニクス機器を搭載しており、非ステルス機でありながらも現代航空戦に十分に対応する能力を持っているとか。とうぜん、F-35といった第5世代戦闘機との連携した運用も想定されています。 今回のイスラエル国防省が採用を決めたF-15IAも、じつはこの一連の「アドバンスドイーグル」をベースにしたモデルなのです。