心地よい関係を作るために大切な<言わない知性>とは?商談中、プライベートの電話に出るのは自己顕示欲丸出しの行為で…
◆いつの時代も求められる「節度」 前向きな思いもネガティブな思いも、すべてを話す。 把握している情報の、すべてを話す。 こんな「すべてを開けっ広げに伝える」という姿勢に、わたしは懐疑的でいます。 言わなくていいことは、言わない。 伝えなくていいことは、伝えない。 話さなくていいことは、話さない。 その塩梅(あんばい)は難しいところですが、いつの時代も“節度”のようなものが求められている気がします。
◆余計なひとことが引き起こす事態 その理由にはいろいろあります。 1つ目の理由は「相手を傷つけたり、不安にさせたり、気分を害したりしてしまう可能性があるから」です。 余計なひとことが、相手を無用の詮索に向かわせたりすることもあるでしょう。 そんな事態を未然に防ぐため、沈黙が“金”になるわけです。 たとえばわたしは、打ち合わせの席上で大抵のミスは指摘しません。その場に居合わせた人の、誰も幸せになりません。大事なのは話の流れでしょう。 また「話をする人が気兼ねなく思いを話せる空気」にしたいという思いもあります。よほどの間違いでなければ修正は打ち合わせの後でもできますし、ほとんどの場合本人が気づきますから。 2つ目の理由は「相手の成長を阻む可能性があるから」です。 これは、わが子や部下など「誰かを“育てる”際に当てはまるケース」です。 相手が問題や謎を解こうとしているのに、正答を提示してしまっては、いつまで経っても解法は身につきません。 相手に仮説を立てさせ、その検証を試みてもらうためにも「あえて答えは保留する」というわけです。
◆「言わない」という知性 3つ目の理由は「すでに関係が温かいから」です。 極端な話、よい関係が築けていれば、会話自体が“蛇足”な場合もあります。 そんな沈黙が温かい関係を「親しい間柄」と呼ぶのでしょう。 ですが、それに気づかない人も多いもの。たとえば「間が持たないのは困る」とばかりに適当な話題を口にし続け、最終的に余計なことに触れてしまう……。 そんなコミュニケーションは、非常に惜しいと思いませんか。 言う価値より、言わない価値。「言わない」という知性もあるのです。 いずれにせよ、相手の洞察力や読解力を信用して委ねることです。「言わない知性」とは、「相手を信頼できるという知性」です。 ※本稿は、『60歳からの人生デザイン - 手ぶらで、笑顔で、機嫌よく過ごすための美学』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
秋田道夫
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