【どうなる2025年】トランプ氏の大統領返り咲きの影響は不可避。世界的な“内向き化”で日本人の生活はどう変わる?
2024年は例年にも増して、多くの出来事がありましたが、来年以降の私たちの生活にもっとも大きな影響を与えそうなのは、やはりトランプ氏のアメリカ大統領返り咲きでしょう。トランプ氏が主張する政策が本当に実施された場合、私たちの生活は一変する可能性があります。それはどういうことでしょうか。 【写真】米タイム誌の「今年の人」に選出。NY証券取引所で、自身の写真を前にスピーチするトランプ氏(ほか写真2枚) 皆さんよくご存知のように、日本という国は製造業を中心に経済を発展させてきました。自動車メーカーをはじめとする日本の製造業は米国に製品を輸出したり、販売することで事業を成り立たせてきたわけです。直接、製造業に携わっていない人でも、日本国内に多くの工場や付帯設備が存在することの恩恵を受けてきましたから、私たちが稼ぐお金の結構な割合が製造業によってもたらされていたと考えてよいでしょう。 これまで米国は、自身について「世界のリーダー」であると考えており、自国の市場は分け隔てなく各国に開放するという姿勢で経済運営を行ってきました。これによって日本企業は自由に米国でビジネスをすることができ、私たちも豊かな生活を享受することができました。 しかしながら、こうした米国の姿勢というのは、世界全体で見た場合、むしろ珍しい部類に入ります。 日本のことを考えてみれば分かりやすいですが、日本人の多くは、外国から安価な農作物などが大量に輸入されてくることには常に強い警戒感を持っています。また、日本の企業や不動産を外国の資本が買い漁ることについてもアレルギー反応を示します。 ところが米国はそうではなく、自身が海外に自由に打って出ると同時に、自国への外国企業の進出も受け入れ、お互いに切磋琢磨すればよいという感覚を持ち続けました。そのおかげで、日本やドイツ、中国は米国との貿易で大きな恩恵を受けることができたわけです。80年代から90年代にかけては日本メーカーによる怒涛の輸出攻勢で米国企業は壊滅的な打撃を受け、多くの労働者が失業しましたが、それでも市場を閉じることはなかったのです。 ところがここ10年、米国の世論は急速に内向き化が進んでおり、第1次トランプ政権は中国からの輸入に対して高関税をかけ、米中は事実上の貿易戦争に突入しました。その後、政権が代わりバイデン氏が大統領に就任しましたが、バイデン氏もその方向性は変えず、むしろ保護貿易的な政策を推し進めてきたというのが現実です。 そして今回、トランプ氏が大統領に返り咲いたことで、トランプ氏は内向き政策をさらに強力に推し進め、中国には60%、日本やドイツに対しては10%の関税を課すという強硬な方針を掲げました。 簡単に言ってしまうと、この政策は「外国人が米国にズカズカと入ってくることはケシカラン」ということです。もし、この関税が実際に課されることになった場合、日本から米国への輸出は大幅に減少するでしょう。
加谷 珪一