新聞・テレビはいつまで「偽りの中立」を続けるのか…「報道の自由」を自ら手放したマスコミの末路
■大日本帝国時代の反省が忘れられてしまった 奇妙なのは、第二次安倍政権以降の自民党政権下では、日本の「報道の自由度ランキング」がずっと低迷したままなのに、当事者であるメディア業界、とりわけ大手新聞各社と大手テレビ各局、NHKの社員たちが大した問題意識も危機感も持たず、まるで他人ごとのように軽く扱っていることです。 戦前から戦中にかけての昭和の大日本帝国時代、当時の大手メディアだった新聞各紙とNHKラジオは、実質的に政府と軍部に阿諛追従(あゆついしょう)する姿勢をとり、1937年7月の日中戦争勃発から1945年8月の無条件降伏受諾(正式な降伏文書への調印は9月2日)までの8年間、政府と軍部の戦争遂行を批判することはありませんでした。 戦後、朝日新聞をはじめとする日本の大手メディアは、先の戦争への加担と国民に対する戦争扇動を反省し、政府への阿諛追従ではなく、批判的思考に基づく権力監視のジャーナリズムを、欧米の民主主義国にならって行ってきたはずでした。 しかし、2012年12月に自民党が政権を奪回し、第二次安倍政権が発足して以降、日本の大手メディア各社では、戦前や戦中の反省もいつしか忘れられてしまったようです。 こうして日本は、新聞社やテレビ局の社員である政治記者の「自己検閲」などにより、「報道の自由の底」が抜けた国になってしまいました。 ---------- 山崎 雅弘(やまざき・まさひろ) 戦史・紛争史研究家 1967年大阪府生まれ。軍事面に加えて政治や民族、文化、宗教など、様々な角度から過去の戦争や紛争を分析・執筆。同様の手法で現代日本の政治問題を分析する原稿を、新聞、雑誌、ネット媒体に寄稿。著書に『[新版]中東戦争全史』『1937年の日本人』『中国共産党と人民解放軍』『「天皇機関説」事件』『歴史戦と思想戦』『沈黙の子どもたち』など多数。 ----------
戦史・紛争史研究家 山崎 雅弘