【バレー】河野裕輔のエール! 第27稿パリオリンピックを振り返って
決勝トーナメントに臨む代表
当初の予想ではC組2位(2勝1敗)で決勝トーナメントに進出、決勝トーナメント1回戦の相手は相性のいいスロベニアあたりと予想されていた。まずここが大きく変わり、決勝トーナメント1回戦の相手はイタリア。しかし筆者はポーランドやフランスよりはやりやすいと考えた。なぜなら石川・高橋は今季まで数年イタリアリーグ一部でプレーしており、イタリア代表を構成しているイタリア人選手に「慣れ」ていることが日本にとっての大きなアドバンテージとなり、さらに日本のモチベーションアップにつながると考えたからだ。厳しい戦いになることは当たり前だが、十分チャンスのある展開だったと今でも思う。
vsイタリア
オリンピック最高視聴率をたたき出したこのゲーム。当然筆者もTVにかじりついて応援させていただいた。結果はフルセットでの敗北となったが、悔しさと同時に「あぁ、日本は着実に金メダルへの階段を登っているんだな」と感じたゲームであった。少し振り返ってみたい。 第1第2セット、日本のディフェンスが光る。イタリアおアウトサイドヒッター(以下OH)を的確に狙う戦略性の高いサーブや石川、西田のコースを狙う強いジャンプサーブをきっかけに、ミドルブロッカー(以下MB)を中心としたネットディフェンスで、スパイクのコースを限定し、ディグにつなげる日本のリズム。そして予想通りメンタルコンディションが最高潮な石川のオフェンスを中心に、瞬く間に2セットを連取。誰もが「行ける!!!」と思ったことだろう。事実3セット目も先にセットポイント、つまりマッチポイントを握ったのは日本だった。 24-21でマッチポイント。ここからイタリアは石川のマークを厚くする勝負に出た。ブロックのリソースを石川6、西田2、高橋1、MB1くらいの割合で振ったのではないか。これをブロックの定位置に居ながら脳内で処理をしているのだ。これにより24‐24の展開となった。これまで6本のサーブミスを出しているイタリア、ここでもサーブの選択は「攻め」だった。セッターのジャネッリはシュート回転をかけた強烈なジャンプサーブを山本の方に打つも、途中で変化して石川のエリアへ。これがノータッチのサービスエースとなった。このサービスエースがイタリアの息を吹き返す要因となったことは間違いないだろう。ここからイタリアベンチのベンチワークも光った。レフトから打つOHミキエレットはサウスポーだが、前半はレフトからエンドラインに向けて打つスパイクが多かった。しかしベンチから何らかの指示があったのだろう。日本のディフェンスシフトがエンドライン方向に3人並ぶ事を見越して、レフトからインナー(逆サイドのサイドライン方向)へのスパイクを多用。日本はここにディガーがほぼいなかった。元々ハイセットの打ち合いになった時にはブロックの上からエンドライン方向に打たれることが多いのだが、それを予想して日本は深めのシフトを取っていたことはハイセット対策としては非常に正しい選択だ。しかしそれを試合中に変更できるほどの判断材料をイタリアベンチは提供したという事は、非常にリスペクトできる。そして5セット目、マッチポイントからウィニングポイントの17点目を取ったのはイタリアであった。1セット目以外はすべて2点差という事を考えても本当にわずかな部分での勝敗であったことが伺える。