スイセンロードにある地蔵堂前から、スイセン越しに富士山を望む（写真＝伊藤哲哉）

真冬でも温暖な房総では、12月から2月にかけてスイセンが見ごろとなる。千葉県南部・鋸南町で、スイセンの芳香を堪能しながら里山ハイキングを楽しもう。

江月上部の沿道に咲くスイセン。里山の雰囲気を味わいながら散策できる（写真＝伊藤哲哉）

越前、淡路と並んでスイセンの日本三大群生地といわれている千葉県・鋸南（きょなん）町。江戸時代には、鋸山のすぐ南にある保田（ほた）地区で栽培されたスイセンは「元名（もとな）水仙」と呼ばれ、船で江戸へと出荷されていたという。 鋸南町のスイセンかどうか定かではないが、かの松尾芭蕉も「水仙や白き障子のとも映り」「初雪や水仙の葉のたわむまで」と、スイセンをモチーフに俳句を詠んでいる。当時からスイセンはよく知られていたようだ。 近年では、地域の高齢化や過疎化が進んで周辺のスイセン農家は減り、往年の豪華絢爛、華やかなお花畑は見られなくなったが、街の沿道に咲く可憐なスイセンの花と芳香は、今も変わらず優しくハイカーを元気づけてくれる。 そんな中でも、江月（えづき）スイセンロードや、をくずれ水仙郷、佐久間ダム公園など、今でもとくにスイセンの美しいスポットがいくつかあり、観光客やハイカーが多く訪れる。今回はそのうち、駅から駅へとつないで歩くことができる江月スイセンロードを紹介しよう。

保田駅前の観光案内所。スイセンの開花情報も確認できる（写真＝伊藤哲哉）

JR内房線保田駅を降りると、すぐに観光案内所（火曜定休　※2024年1月現在）がある。スイセンロードの情報を入手してから出発しよう。 標識に従って、まずは江月コミュニティセンターをめざして進む。車に注意して、道路脇の斜面に咲くスイセンを楽しみながら、ゆっくりと歩こう。陽光に照らされ輝くスイセンをめでながら歩いているうちに、やがて江月コミュニティセンターに着く。トイレがあるので小休止できる。

地蔵堂から眺められる富士山は圧巻（写真＝伊藤哲哉）

コミュニティセンターから地蔵堂付近まで、山の斜面にあるスイセンのお花畑と芳香を楽しみながらのハイキングとなる。途中、「馬つなぎ石」の標識に出合う。源頼朝に献上された名馬「池月（いけづき）」がつながれていた石といわれていて、江月という地名は「池月」から由来するとも伝えられている。 やがて地蔵堂付近に近づいてくるとスイセンが増え、とくに谷間の南斜面に多く見られるようになる。地蔵堂付近は江月スイセンロードの中心部であり、多くの人でにぎわう場所だ。 またここは富士山のビュースポットでもあり、空気が澄んでいるとすばらしい眺めが展開する。