房総・鋸南の江月スイセンロードで、芳香と眺望を楽しむ里山ハイキング
スイセンの咲く里山風景と富士山の眺めを満喫した後、地蔵堂からさらに歩を進めよう。炭焼き小屋を過ぎ、いぼ神様のある分岐に到着。 いぼ神様には、かつて江月村にいぼが流行した時に、お供えした線香の灰を塗ったところ、いぼが消えたという言い伝えがある。 いぼ神様のある分岐からは右に緩やかに上がっていき、見返り峠を経て赤伏(あかぶし)の集落方面へと下っていく。 安房勝山(あわかつやま)方面と東京湾を眺め、赤伏の集落に入らずに道標に従って進む。このあたりは道がわかりづらいので、注意しよう。おだやかな里山風景の中を進み、富津館山道路の鋸南富山ICをくぐると、やがて天寧(てんねい)寺に着く。古刹にふさわしい山門と境内には樹齢600年と伝えられているビャクシンがあるので、ぜひ立ち寄ってみよう。和見橋を渡り、佐久間川沿いに進めばゴールの安房勝山駅が見えてくる。
スイセンの最盛期は例年1月中旬から下旬だが、スイセンが山里の南斜面に咲く1月から2月ごろがベストシーズン。コースはなだらかな舗装道を歩くので、子ども連れやシニア層でも安心してハイキングできる。ただし、冬でも温暖な房総といっても、海から風が吹くと寒いので、防寒着は必要だ。 立ち寄りスポットとしておすすめなのが、スタート地点の保田駅東にある道の駅保田小学校だ。2014年に廃校となった保田小学校が、名前はそのままに2015年に道の駅として生まれ変わった施設である。体育館や校舎棟はリノベーションによってマルシェや地域の飲食店となり、地域の特産品、各種情報発信の場所になっている。2023年10月には、食堂や広場のある「保田小附属ようちえん」が開設され、地域の人々や観光客が集まり、にぎわいを見せている。
------------------------- 伊藤哲哉(いとう・てつや) 1969年、神奈川県生まれ、千葉県在住。北アルプス・南アルプス、房総の低山、上信越の山などを主なフィールドに撮影に通う。山岳雑誌に写真と記事を提供し、山と溪谷社から共著で『分県登山ガイド 千葉県の山』、『アルペンガイド 南アルプス』を出版。2020年12月、2021年4月に写真展「SEASONS~北岳~」、2023年6月に写真展「夏山讃歌~南アルプスの歌声」を開催。日本写真家協会(JPS)、日本山岳写真協会会員。 -------------------------
写真・文=伊藤哲哉