拉致から47年、政府は「命がけで動いて」 88歳になった母の叫び めぐみへの手紙 横田早紀江
■「早紀江さん訴えが原点」石破首相の決意信じる
10月17日、私たちは石破茂首相と首相就任後、初めて面会しました。平成9年に家族会が発足してから、首相は13人目。長すぎる膠着(こうちゃく)を痛感します。
面会の席では、日朝首脳会談の早期実現を重ねて訴えました。両首脳が忌憚(きたん)なく、思いやりを持って、未来の展望に議論を尽くしていただきたいと思います。私たちの願いは「拉致問題の即時解決」という一点に尽きるのです。
石破首相は面会時、「平成14年9月17日の出来事」に言及されました。
北朝鮮の平壌で、史上初の日朝首脳会談が開かれたあの日。北朝鮮は拉致被害者5人の生存を明かす一方で、めぐみちゃんを含めた他の被害者について「死亡した」などと主張してきました。
東京で報告を聞いた私たち家族は、心の整理もつかないまま、国会の議員会館で記者会見を開きました。当時、拉致問題解決へ超党派の議員が結成した「拉致議連」の初代会長だった石破首相も同席されました。
家族それぞれが思いを語り、お母さんも懸命に声をあげました。
「いつ死んだかもわからないものを信じることはできません。まだ生きていることを信じ続けて闘っていきます」
この会見でそばに座っていた石破首相は、先の私たちとの面会で、「早紀江さんが涙で訴えたことが忘れられず、それが自分の拉致問題に対する思いの一番強い原点だ」と述べられました。
石破首相と膝詰めでお話しをしたことはなく、お人柄はよく知りませんでしたが、私たちの心情を理解されていると感じました。この熱意をたぎらせ、膠着した局面打開へと邁進(まいしん)してくださると信じています。
■トランプ氏にも後押し期待
戦禍が絶えない国際情勢は一層、混沌としています。拉致問題も思惑が入り乱れ、解決への道筋がかすんでしまうかもしれません。
お母さんは88歳になってしまいました。去年は過労で寝込み、体力の限界を痛感しています。有本恵子さんの父、明弘さんも96歳です。家族だけでなく、北朝鮮に捕らわれた被害者も、軒並み老いています。