拉致から47年、政府は「命がけで動いて」 88歳になった母の叫び めぐみへの手紙 横田早紀江
めぐみちゃん、こんにちは。目まぐるしく日々は流れ、令和6年もあっという間に過ぎ去りそうです。今年も、あなたが北朝鮮に拉致された11月15日を迎えてしまいました。13歳で無残に連れ去られたあなたを救えないまま47年。何ものにも替えがたい人生を無慈悲に壊された怒り、悲しみ…。筆舌に尽くしがたい感情が渦巻き、押しつぶされそうになります。 【写真】日朝首脳会談後の記者会見で娘の横田めぐみさんの生存を訴える早紀江さん。石破茂首相(前列右)は間近でその声を聞いていた=平成14年9月17日 ■思い出にひたる時間、もうない 10月5日、あなたは60歳を迎えました。誕生日は、自宅に飾った写真のそばに、大きめのケーキを置いて祝ってきました。でも、お父さんが4年前に天に召されてからは、私1人では食べきれず、小さなケーキになりました。今年も、ひっそりとお祝いをしました。 「あのときはこうだったね」と、昔の思い出にひたる時期はとうに過ぎ去ったと感じています。とにかく、一刻も早くめぐみちゃんに会いたい。抱きしめてあげたい。それだけを願う日々です。 今年、日本の政治は大きく動き、与野党のリーダーの顔ぶれも変わりました。自民党の総裁選挙と立憲民主党の代表選挙に先立つ9月11日、私たち家族会と救う会は、拉致問題を真剣に取り上げるよう訴える記者会見を急遽、開きました。 政界のリーダー候補たちは日本の展望を語り、「われこそは」と支持を訴えていましたが、拉致解決への具体策や、意気込みを語る声は、ほとんど聞こえませんでした。 「このままで、本当にめぐみちゃんに会えるのだろうか」「願いがかなわないまま、拉致問題は幕引きとなり、私も天に召されるのだろうか」。激しい絶望に押しつぶされそうになりました。 こうした選挙に合わせ、私たちが発信したのは初めてでしたが、特定のどなたかを推すような意図は一切、ありませんでした。拉致問題が埋没しているという途方もない危機感の中で、周囲のご理解も頂き、場を設けたのです。 私は「もっと真剣にとらえてほしい。命がけで動いてほしい」と訴えました。願いをくんでか、街頭やテレビ討論で議題にのぼる機会が増えたように感じ、感謝の念に堪えません。 ただ、政治の動きに、物足りなさを感じてしまうのは事実です。