菊池桃子あの日の一枚 アイドルが「雲の上の人」だった時代
菊池桃子さんも息の長い芸能人になりました。競争の激しいこの世界で長年に渡り仕事をし続けるのは並大抵のことではありません。4月からは新ドラマも決まり、今後も活躍を楽しみにしているファンは少なくないでしょう。今回の「あの日の一枚」は、そんな菊池さんの若かりし時代に当時アイドルファンだった方が撮影した貴重な一枚です。
ポジション確保に苦心した思い出も
日付は1987年9月23日、東京・原宿の東郷神社で開催された日本テレビの「NTVまつり」で撮影されたもの。ファンとしてさまざまなアイドル現場を撮影に出かけていたカメラマンの大池和行さんは、ネットなき時代にアイドル雑誌などから情報を得て、できるだけ早く現場に赴いて良い場所を確保したりと苦心していたそうです。 「場所取りの必要があったのは、当時は明るいズームレンズがなく単焦点の望遠レンズが主流だったことが大きいです。アイドルのステージでは300mm F2.8(通称サンニッパ)が重宝しましたが、テレコンという倍率を変える機材を併用しても300mmのほかに420mm(1.4倍)、600mm(2倍)の3つの画角しか使えませんでした」 300mm F2.8の300mmは焦点距離のことで、数字が大きいほど倍率が高くなり遠くの景色を拡大して撮ることができます。F2.8はF値といってレンズの明るさを示し、数字が小さいほど明るいレンズになります。明るいほど被写体の背景をボカすことが出来ます。今、スマホのカメラはワンタッチで1.0倍、2倍、6倍など倍率を変えることができますし、ポートレートモードなど簡単に背景をボカすことも可能なので便利になったものです。
イベント情報は雑誌から 初めて撮った菊池桃子
大池さんが初めて撮った芸能人が、菊池桃子さんだったそうです。冒頭の写真の2年前、1985年8月3日、神奈川県三浦市で行われた「 三浦海岸フェスティバル」の時だったとか。最初の頃は思ったような写真を撮影できずに苦心することが多かったと、懐かしそうに振り返ります。 「中学生の頃、宮崎美子さんのCMで有名なミノルタX-7というカメラを使っていました。まだアイドル歌手が雲の上の人だった時代で、『芸能人の写真を撮ってみたい!』という気持ちから最初に見つけたのが雑誌『ぴあ』に掲載された夏の『三浦海岸フェスティバル』の情報です。期間中、日替わりで大勢の芸能人が出演するというものでした。ラジオ日本の公開録音で、炎天下の三浦海岸に設けられた特設ステージで番組を進行するという内容でした」 その出演者の中に、人気絶頂だった菊池桃子さんの名前を見つけた大池さんは現場へ赴きます。 「最初は早めに到着するという工夫もなく、着いたのは開演直前。会場を見渡す限り人の海。どう頑張ってもステージに近寄ることはできず、人ごみの中から200mmの望遠ズームを構えました。まずファインダーを覗いて愕然としました。豆粒のような菊池桃子さんの顔に必死にピントを合わせ、シャッターを切るのが精いっぱい。露店で販売されていたアイドル生写真との圧倒的な差を見せつけられました」 その経験から、機材に関する知識も勉強し、より良い写真を撮るために研鑽を重ねて行ったと言います。 今はアイドルとの距離感もずいぶん近くはなりましたが、いつの時代にもアイドルは私たちのあこがれであり、夢を与えてくれる存在であり続けるのでしょう。 (取材・文:志和浩司、写真:大池和行)
■菊池桃子(きくち・ももこ)
1968年5月4日東京出身。1984年アイドル歌手デビューし、ブロマイドの年間売上が1位になる人気者になった。以後も映画やドラマ出演などキャリアを重ね、2012年には法政大学大学院政策創造専攻修士課程修了。同年8月から戸板女子短期大学客員教授を務めている。現在もテレビ番組『人生の楽園』(テレビ朝日系)をはじめラジオなどレギュラー出演。2023年4月15日からスタートする真夜中ドラマ『婚活食堂』(BSテレ東)で主演を務める。