中国で抜群の集客力を誇る「サイゼリヤ」 成功の影にあった、二流の立地での出店戦略
個人消費低迷、原価高騰、人手不足など苦境の外食業界において、安さとおいしさで人気を集めているのが、イタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」です。サイゼリヤは1500以上の店舗のうち、約3分の1を海外店舗が占めているなど、アジアを中心に、海外進出に成功していることでも知られています。 【図】マクドナルドの立地戦略...アウトカーブとインカーブ、どちらに出店しているのか? 中国での店舗拡大を実現した出店戦略とはどのようなものだったのでしょうか。2009年から2022年までサイゼリヤの社長を務めた堀埜一成さんの視点で解説します。 ※本稿は『サイゼリヤ元社長が教える 年間客数2億人の経営術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。
二流の立地で安く始める
客商売では立地が大事とよく言われますが、上海に進出したばかりの頃は、とにかくひどい立地ばかりでした。賃料の問題もあって一・五流、場合によっては二流の土地に出店せざるを得なかったというのが実情ですが、結果的に中国では、この出店戦略が大当たりします。 最初は大型の路面店が中心で、客席が200席を超える店もありました。それもあって、なかなか埋まらなかったのですが、値下げによって爆発的にヒットしたおかげで、順調に店舗数も増えていきます。100店を超えたあたりからは、中国トップのショッピングセンターからも声がかかり、とてもいいスペースをもらえるようになりました。 好調さを継続していくと、さらによい立地を提案されるようになりました。ただし、それには次のような条件をのむ必要がありました。 「1階に入りたかったら、ほかの土地にあるショッピングセンターにも全部出店してほしい」 「それだけは受けるな」と私は言っていました。なぜなら、広大な中国全土に散らばる店を運営できるだけのキャパシティがまだなかったからです。それに全部ついていけるのはマクドナルドくらいで、だからマクドナルドは、どのショッピングセンターでもいちばん目立つ場所に出店しているのです。サイゼリヤは、その次あたりにいいスペースをもらえています。集客力があるからです。日本でいえば、スターバックスのような扱いです。 ショッピングセンターに出店できるようになると、今度は、最初の大型店を潰して、その周辺のショッピングセンターに少し小型の店舗を2店、3店と入れていく。 そうやって店舗数を増やしていきました。わずか数年で店舗を潰して大丈夫? という声が聞こえてきそうですが、中国の店舗は老朽化が激しいのです。安い木材を使っているからです。1号店なんて、たった2年でボロボロになりました。だから、最初に出した店を潰して、よりよい立地のショッピングセンターに移っていくにはちょうどいいタイミングだったのです。