歌手AIさんが子どもにも名付けた「平和」を常に願い、率直な感情を歌い続ける理由[FRaU]
2023年5月、広島県で主要7ヵ国の首脳が集まるG7広島サミットが開催されました。そのプログラムの一環である「次世代シンポジウム」のなかで響いていたのが、シンガーのAIさんの歌声です。各国首脳のパートナーなどが集まるイベントに出席し、歌を披露し、ユニセフからのメッセージを読み上げました。 この経験について「とても緊張した」と笑いながら語ります。常に自身の曲を通して平和や愛を呼びかけ続けていたAIさんだからこそ、この大役を任されたのでしょう。彼女が発信し続ける平和への願いは、音楽を通して培われたものでした。 FRaU2024年1月号より、AIさんのインタビューを掲載します。
歌で伝える「武器を捨てよう」というメッセージ
「小さい時からマイケル・ジャクソン、スティービー・ワンダーなどの曲をよく聴いていました。恋愛を歌ったセクシーな曲も好きでしたが、世界平和のために歌った曲に心を打たれました。どんな気持ちで歌っているのかが音楽から伝わってくるし、アーティストが平和のために普段から行動をしていることも知りました。そんなアーティストに自分もいつかなりたいと思っていました」 育ってきた環境もAIさんの考え方に影響を与えた。 「イタリア系アメリカ人の母は、愛情豊かな人で、チャリティーやボランティア活動などに積極的に参加し、どんな人にも惜しみなく愛を与えていました。小さな頃からいろんな国の人との交流も盛んだったので、見た目が違ってもみんな同じ人間だという感覚は自然と持っていたんです」
2人の子どもの子育て中でもあるAIさん。平和と幸せを願う気持ちは子どもたちの名前にも込められている。 「娘には平和、息子には博愛と名付けました。未来を生きる子どもたちが、心穏やかに安心して生きていけるように。そして私が子どもの名前を呼ぶ度に、平和を願う気持ちを思い出せるようにという思いを込めました」 常に平和を願うAIさんは、現在世界のさまざまな場所で起こっている戦争に心を痛めている。 「世界平和を訴えると『AIは恵まれた環境で育っているから、辛い立場の人の気持ちはわからない』なんて言われたこともあります。意見が違う人がいるのは当たり前。怒りの感情があるのも、喧嘩してしまうのも人間だから当然です。でも対立する必要はない。ましてや、爆弾を落として多くの市民を巻き込む必要があるでしょうか。戦争を主導している人にも家族や友人がいるはず。大事な人が巻き込まれたらどんなに悲しいか想像すればわかると思うのに」 2020年にリリースされた楽曲『Not So Different』では「人間は誰しもそんなに変わらない」という思いを込め、歌詞では「花束を銃の代わりに」と強いメッセージを歌っている。 「遠いところで起こっているように感じる戦争ですが、世界が平和ではないと自分にも影響が出てきます。一見自分とは関係ないように思えても、全部繋がっている。戦争に巻き込まれていない私たちができる努力もあるはずです」