ブラックロックのビットコインETF、過去4カ月で最大の下落──Googleの量子コンピューターチップ発表が影響か
ナスダックに上場しているブラックロック(BlackRock)のビットコイン(BTC)現物ETF(上場投資信託)「IBIT」は、9日に下落した。これは、過熱していた暗号資産(仮想通貨)市場が冷え込み、量子コンピューターによってビットコインのセキュリティが脅かされるかもしれないという根拠のない懸念がソーシャルメディアで広がったためだ。 データソースのInvesting.comによると、IBITの価格は5.35%下落して54.73ドルとなり、8月上旬以来最大の1日あたりの下落幅となった。ビットコイン価格も4%を超える下落となり、9万4300ドルを下回る安値を記録。レバレッジをかけすぎたアルトコインのトレーダーが清算され、市場全体のより大きな損失につながった。 このような反落は強気相場ではよくあることだが、9日の損失は、グーグル(Google)が量子コンピューターチップ「ウィロー(Willow)」を発表したのと同時に起きた点で注目すべきだ。このチップは、世界最速のスーパーコンピューターでも処理に10の24乗年(1兆の1兆倍年)かかるような問題を、わずか5分で解ける。 Xには、ウィローがビットコインの複雑なアルゴリズム「SHA-256」を簡単に破り、ネットワークを危険にさらすのではないかという懸念を示す複数のユーザーがいた。というのも、ウィローは105個の量子ビット(qubit:キュービット)を搭載し、エラー率を改善したからだ。量子ビットとは、0か1のどちらかになる通常のコンピューターのビットの、超強力なバージョンと考えてほしい。量子ビットは0と1の状態を同時に取ることができ、チェックされるまでオンとオフを同時に行えるスイッチのようなものだ。これにより、量子コンピューターは通常のコンピューターよりもはるかに速く問題を処理できる。 一部の専門家は、ウィローはまだビットコインに危険を及ぼすほど強力ではないため、このような懸念には根拠がないと述べている。 「ウィローには105個の量子ビットがあり、量子実験には最適だが、ビットコインの暗号を解読するのに必要な量にはほど遠い」と偽名アナリストで技術専門家のシネマッド・プロデューサー(Cinemad Producer)氏はXで述べた。さらに「専門家は、ビットコインのセキュリティに打撃を与えるには、高品質の量子ビットが約100万個必要だと見積もっている」と付け加えた。 イギリスのサセックス大学と提携している企業ユニバーサル・クォンタム(Universal Quantum)の2022年の研究によると、ビットコインの暗号を破るには19億量子ビットの容量を持つ量子コンピューターが必要だという。