斎藤知事再選で「パワハラ・おねだり疑惑」は闇の中に…「百条委員会」が存在価値を失ったといえるワケ
斎藤元彦知事のパワハラ疑惑やおねだり疑惑を追及していた百条委員会は、今後どうなるのか。ジャーナリストの小林一哉さんは「百条委は骨抜きになり、存在価値を失った。斎藤知事の出欠にかかわらず、疑惑を追及することはもはやできないだろう」という――。 【写真】耐震性能が不足しているとされ、解体が決まっている兵庫県庁舎の1号館と2号館 ■「いじめられ役」を演じ圧勝で舞い戻った 職員に対する一連のパワハラ疑惑やおねだり疑惑を吹き飛ばすように、兵庫県の斎藤元彦知事(47)は出直し知事選で圧勝、再選を果たした。 県幹部による告発文書に端を発した兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)が全国的な注目を集め、県議会すべての会派、無所属の議員86人全員が全会一致の不信任決議案に賛成したことで、斎藤知事は“知事失格”を宣告されるかっこうとなった。 斎藤知事は、9月19日の全会一致の不信任決議に対して、県議会解散ではなく、自動的に身分を失う「失職」を選択した。 「いじめられ役」を演じるなど、したたかな選挙戦略を展開した斎藤知事は、若者・Z世代などから絶大な支持を取りつけた。 今後、約111万票という「民意」をバックに、「最も大事なのは県民のための改革」だとして、自らの提案した政策を何としても実現しようとするのは間違いない。 ■疑惑追及は「改革」への強い疑問が発端 「県民のため」を掲げる斎藤知事の「改革」とは、自らの提案した政策が正しいのであり、県議会の反対こそが間違いだと認めさせることである。 県議会はパワハラ疑惑などに対する厳しい追及を行ってきたが、これは斎藤知事の提案した政策への反発、不満によるものが大きかった。 つまり、パワハラ疑惑などの追及の根底には、県議会が斎藤知事の「改革」にこれまで強い疑問を抱き、その姿勢をあらためるよう求めてきたことがある。
■百条委員会は骨抜き状態になる 選挙戦で、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花隆志氏のYouTubeをはじめとしたSNSは、斎藤知事の「改革」に横槍を入れる百条委員会を激しく攻撃することになった。 この結果、百条委員会委員の県議1人が辞職に追い込まれるなどSNSでの誹謗中傷はとどまることを知らない勢いとなった。 SNS戦略を駆使した斎藤知事は表面的には百条委員会に協力する姿勢を示しているが、実際には、同委員会の調査は今後、委縮、骨抜きとなっていくことを十分に承知しているのだ。 不信任決議前と同様に、自らの正当性を淡々と主張するのは目に見えている。百条委員会が再開され、斎藤知事が証言したとしても、選挙前と同じ応酬が繰り返されるだけである。 斎藤知事は、同委員会による25日の証人尋問要請を全国知事会への出席を理由に欠席することを通告し、百条委員会もこれを許可した。次にいつ出頭要請をするかは決まっていない。 この欠席をきっかけに、調査権限を有する百条委員会そのものが存在価値を失う可能性が高い。 この百条委は最終的なゴールを「斎藤知事に道義的な責任を認めさせて辞めさせる」ことに設定していた。選挙を経て斎藤知事が舞い戻ってきたいま、道義的責任を追及しても「道義的責任とは何かわからない」と堂々巡りになるのは目に見えているし、いわんや再び辞めさせることなんて不可能だ。 百条委は斎藤知事の出席の有無にかかわらず、宙ぶらりんの状態になってしまったのだ。 ■主戦場は12月と来年2月の「県議会」へ その代わりに「主戦場」となるのは、斎藤知事の提案などを審議する12月3日開会の県議会、来年度の予算案が提出される2月定例議会などの県議会での論戦となるのは間違いない。 斎藤知事が提案してきた「県立大学無償化」「県庁舎問題の絡む『4割出勤』」などの政策が「改革」として、果たしてふさわしいのか、県議会が斎藤知事の「改革」を止めることができるのかなどを検証したい。