元大関・貴景勝 「頚椎椎間板ヘルニア」と相撲協会が公表 症状・原因を医師が解説
頚椎椎間板ヘルニアの検査や治療
Q.頚椎椎間板ヘルニアの検査内容を教えてください。 甲斐沼先生: 頚椎椎間板ヘルニアを疑う場合には、診察での神経学的所見の評価と画像検査であるX線(レントゲン)撮影・CT・MRI・脊髄造影検査(ミエログラフィー)などを合わせて行います。 神経学的検査:深部腱反射の低下の程度・上肢の感覚異常の有無(スパーリングテスト)・筋力低下の有無と範囲を調べる X線(レントゲン)撮影・CT:椎体の変形・椎間の幅・脊柱管の前後径・不安定性などを確認する MRI:脊髄・神経根の圧迫を確認する 脊髄造影検査(ミエログラフィー):腰椎から脊髄腔内に造影剤を注入し、ベッドを傾けて頚部に造影剤を流し、頚椎部を観察・評価する その後にCT(脊髄造影CT)を撮影して、脊柱管下位の神経の圧迫の位置・程度を評価する。病態の把握・今後の治療方針の決定のための重要な検査で、MRIよりも骨病変の描出に優れている。 Q.頚椎椎間板ヘルニアはどのように診断されますか? 甲斐沼先生: 先程お伝えした神経学的検査にて、どの部位が障害されているかを診断(高位診断)します。その後に、頚椎のMRI・脊髄造影検査などの画像検査で脊髄・神経根の圧迫を確認し、高位診断と照らし合わせて確定診断を行います。 Q.頚椎椎間板ヘルニアの治療方法は? 甲斐沼先生: 治療方法は、保存的治療・手術治療の2つです。症状が出現して約1ヶ月間は、基本的に安静・鎮痛剤・湿布・頚椎カラー固定・神経ブロックなどの保存的治療を行います。症状に応じて牽引療法・運動療法を行うこともあります。 症状は、1ヶ月以内に軽快・消失することが多いです。保存的療法はあくまでも症状の軽快を目的として行うもので、ヘルニア自体を治すものではありません。症状の改善がみられない場合は、手術治療が勧められます。 手術には頚部に対して前方アプローチ・後方アプローチの二通りの方法がありますが、前方アプローチが一般的です。頚部の前面から切開し頚椎の一部を削り、脊髄を圧迫する椎間板を摘出して、脊髄を前方から除圧する前方除圧固定術が主な術式となります。 ほかには椎間孔拡大術・椎弓形成術・椎弓切除術などがあり、術式は症状・所見を総合的に判断して決定します。