元大関・貴景勝 「頚椎椎間板ヘルニア」と相撲協会が公表 症状・原因を医師が解説
大相撲9月場所を10日から休場している関脇・貴景勝(常盤山部屋)の首の痛みの診断書を日本相撲協会が公表したと報じられており、「頚椎椎間板ヘルニア」だったことが明らかになりました。 【イラスト解説】「頚椎椎間板ヘルニア」になりやすい人の特徴 貴景勝はカド番だった先場所を負け越したため、大関から陥落していました。頚椎椎間板ヘルニアは、首・腕の痛みの他に手足の痺れを引き起こし、症状がひどくなると運動麻痺などの症状も出現して日常生活に支障をきたすことがある病気です。 ここでは詳しい症状から治療方法、予防法を医師の甲斐沼先生に解説してもらいました。
頚椎椎間板ヘルニアの症状と原因
Q.頚椎椎間板ヘルニアはどのような病気ですか? 甲斐沼先生: 頚椎は、7個の椎骨と椎骨同士を繋ぐ6個の椎間板が交互に連なった構造です。頚椎の真ん中の脊柱管と呼ばれるトンネルには脊髄が通っており、さらに脊髄から神経根という細い神経が左右の手に向かって伸びています。 頚椎椎間板ヘルニアは、何らかの原因で椎間板の組織に亀裂が入って椎間板が後方に飛び出して、脊髄・神経根が急激に圧迫されて血行障害・神経症状を引き起こしてしまう病気です。 Q.頚椎椎間板ヘルニアの症状を教えてください。 甲斐沼先生: 脊髄が圧迫された場合と神経根が圧迫された場合とで、症状は大きく異なります。 脊髄が圧迫された場合を脊髄症といい、両手の痺れに加えて、両手を使う細かい作業(ボタンが留めにくい・箸が使いにくい・字が書きにくい・ページをめくりにくいなど)が困難になることが特徴です。 両足も足先から徐々に痺れ、ふらつき・段差につまづくなどの歩行障害が生じます。症状は数日から数週間で急速に進行することが多いです。 また、神経根が圧迫された場合を神経根症といいます。首から片側の肩甲骨・腕・手指にかけて激しい痛み(放散痛)・痺れが生じ、首を後ろに倒すと症状が悪化して痛み・痺れの部分に脱力が生じるという特徴があります。 この激しい痛みは2~3週間でピークを越え、数週間~数ヶ月で軽快することが多いです。場合によっては、鈍い痛み・痺れが残る場合もあります。 Q.頚椎椎間板ヘルニアの原因は? 甲斐沼先生: 椎間板が飛び出してくる原因の1つとして、加齢性変化による椎間板の機能低下が挙げられます。椎間板は常に圧力のかかる状態にあるので、組織の中で最も劣化が進みやすく、椎間板が飛び出しやすくなるのです。 喫煙も血流悪化で椎間板の劣化を起こしやすくする原因となります。 また頚椎は構造上外からの負担に弱く、姿勢・外力の影響を受けやすいため、パソコンを使った長時間のデスクワーク・首に負担のかかる重労働・接触の多いスポーツ(コンタクトスポーツ)なども椎間板が飛び出しやすくなる原因となります。 Q.頚椎椎間板ヘルニアになりやすいのはどんな人ですか? 甲斐沼先生: 頚椎椎間板ヘルニアになりやすい人は以下のような人です。 ・背骨に負荷のかかるような姿勢(パソコン・スマートフォンなどの多用)が多い人 ・過度なストレスがある人 ・ラグビー・フットボール・格闘技・柔道などのコンタクトスポーツをする人 ・喫煙している人 ・遺伝的要因を持っている人 ・加齢性変化(30~50歳代に多い)がある人 ・外傷(転倒・転落・落下物による衝撃)のある人 ・重労働を行う人