実は「安く買えてラッキー!」と喜んでばかりもいられない…「送料無料で当たり前」の危ない落とし穴
私たちの日常生活では、ネットショッピングの利用が定着し、多くの人の当たり前になりました。今やスーパーで購入した野菜さえも、買ったその日のうちに届けてくれるようになりました。 【画像】びっくり……宅配ドライバーの1日の歩数 あらゆる物が自宅まで配送されるようになった現在、「送料無料」が、消費者のみならずEC事業者のキーワードとなっています。一方で、配送のラストマイルを担う物流事業者ではECや通販の当たり前を支えるため、厳しい状況が……。ECにおける送料無料の仕組みと課題について解説します。
◆映画『ラストマイル』の中の宅配ドライバーの親子のセリフ
「1個、150円」これは、コンビニのおにぎりの値段ではありません。 観客動員数が358万人を超え、興行収入は約51億円を突破した(2024年10月7日現在)(※1)大ヒット映画、『ラストマイル』の中で、配送ドライバーの親子で交わされる会話です。 150円とは、1個の荷物を配達し終えて初めて配送ドライバーが得られる対価。受取人が不在で再配達が続けば、何度足を運ぼうとも利益にはなりません。10個運んでようやく1500円、一日に何個の荷物を運べば、配送ドライバーの生活は楽になるのか……。先行きが見えません。 狭苦しい軽バンの運転席で交わされる会話では、火野正平が演じる生真面目な父と、宇野祥平が演じる見習いの息子との働き方の対立も描かれています。 二人の間で共有される事実は、実直に働いた挙げ句に“過労死”で亡くなったであろうドライバー仲間のこと。薄給ながら昼休みさえ惜しみ骨身を削る高齢の父に対して、息子はせめて昼休みを取ることを主張します。このシーンには現在の日本が直面している労働に対する価値観や、配送のラストマイルの状況が凝縮されています。 『ラストマイル』のシーンと同じような今日において、ECや通販の世界では、「送料無料」が一般的になっています。送料無料は消費者にメリットがありながら、一方でEC事業者のコスト負担となり、配送を担う物流事業者の利益を圧迫する要因にもなっています。