お盆は涼しい室内で映画を観よう!外出せずに夏を感じられるオススメ5選
連日記録的な猛暑が続き、エアコンや熱中症対策なしでは日常生活も外出もままならない2024年の夏。貴重なお盆休みの期間を帰省や旅行にあてる方もいるかと思いますが、エアコンが利いた涼しい室内でまったりと映画を楽しむのもオツなもの。そんな今回は、外へ出ることなく “夏” を感じることができるオススメの映画をご紹介します♪ 『サマータイムマシーン・ブルース』(2005年・日本)(配信:U-NEXT ) ■あらすじ 劇団ヨーロッパ企画の同名舞台作品を、『踊る大捜査線』シリーズなどで知られる本広克行監督が映画化。2005年、夏。とある地方都市の大学に通う甲元(永山瑛太)らSF研究会の部室にあるエアコンのリモコンが、悪ふざけをしている内に壊れてしまう。リモコンの修理もままならず、連日の猛暑の中をエアコンなしで過ごす中、甲元たちの前に突如タイムマシンが現れる。昨日にタイムスリップして壊れる前のリモコンを取ってこようと画策する甲元らであったが、その行動が最悪の事態を招くことが判明し……。 ~タイムマシンの無駄遣い!くだらないけど面白い青春タイムスリップコメディ~ 永山瑛太の映画初主演作にして、ヒロインを演じるのは上野樹里。今や業界の最前線で活躍する2人の若かりし頃の姿を拝めるのも楽しみのひとつであるが、まだブレイク前のムロツヨシと真木よう子が出演している点もご注目いただきたい本作。 肝心の中身はというと、夢や可能性に満ち溢れたタイムマシンという最重要アイテムを、エアコンのリモコンを手に入れるためだけに用いるという滑稽さ、そして、リモコンのために本気を出す登場人物たちの姿が最高にくだらなくて面白い。また、伏線に次ぐ伏線、点と点が繋がり線となった瞬間に生じる爽快感が凄まじく、分かりやすくも奥深いSF描写の数々が、目にする者の想像力を大いに刺激してくれることだろう。 実際に試すかどうかはあなたの判断に任せますが、エアコンのリモコンをあえて切った状態で本作を目にしたのなら、 SF研究会の一員になった気分で作品世界にのめり込めるかもしれません(笑)。本作が楽しめたという方は、同じく時間軸の変化がもたらす面白さが詰まったヨーロッパ企画の映画『ドロステのはてで僕ら』『リバー、流れないでよ』も併せてご覧ください♪ 『パーム・スプリングス』(2020年・アメリカ)(配信:Amazon Prime Video / hulu / U-NEXT ) ■あらすじ 2020年に開催されたサンダンス映画祭にて、同映画祭史上最高額で配給権が売買され、ゴールデングローブ賞作品賞・主演男優賞ノミネートを果たしたタイムループ・ラブコメディ。結婚式に参加するため砂漠のリゾート地へ訪れたナイルズ(アンディ・サムバーグ)は、花嫁の姉であるサラ(クリスティン・ミリオティ)と親しくなり良い雰囲気に。そんな2人の前に謎の老人(J・K・シモンズ)が現れ、ナイルズを襲撃。洞窟へ逃げ込んだ2人であったが、赤い光に包まれ目が覚めると結婚式当日の朝に時間が戻っていた……。 ~バカンスで繰り返される1日を描いたタイムループ・ラブコメディ~ アメリカ・カリフォルニア州に実在する砂漠のリゾート地「パーム・スプリングス」を舞台に、同じ1日が延々と繰り返されるタイムループ劇が繰り広げられていく本作。正確な話をすると、劇中の設定的には夏ではないのだが、保養地としての土地柄や照りつける日差し、プールで遊ぶ人々の姿などから、視覚だけでも夏のリゾート気分を味わっていただけることだろう。 そして、数あるタイムループものとは一味違った物語が展開されていく点にもご注目いただきたい。元の世界(時間軸)に戻るべく試行錯誤を繰り返し、時にはループを利用することで脱出や解決に向けた方向へと物語が進んでいくのがタイムループもののセオリーであるが、(困惑はしつつも)彼らは繰り返される日々の中に楽しみを見出し始め、別段抜け出そうと頑張らない。無論、それだけでは物語が進んでいかないため異なる動きも出てくるのだが、そんな彼らのゆるさが新しくて面白い。 また、恋愛描写にもフォーカスしていく点や、現実世界との関わり方について一考させてくれる機会を宿している点も、この作品独自の持ち味である。もしも同じ状況に陥ったとき、あなたならどのようにタイムループの世界を生きるでしょうか? 『共喰い』(2013年・日本)(配信:Amazon Prime Video / hulu / U-NEXT ) ■あらすじ 芥川賞を受賞した田中慎弥原作の同名小説を、『EUREKA』『空に住む』などで知られる青山真治監督が映画化。昭和63年、夏。高校生の遠馬(菅田将暉)は、父親・円(光石研)とその愛人・琴子(篠原ゆき子)と共に暮らしている。情事の際に暴力的になる円に愛想を尽かした母・仁子(田中裕子)は家を出て行き、父の性癖に嫌悪感を募らせていた遠馬。だが、幼馴染の千種(木下美咲)と身体を重ねる内に、思わず彼女の首を絞めてしまい……。 ~菅田将暉が「転機となった作品」と語る、鬱屈とした夏の物語~ 涼しい室内から外へ出ると、途端にぬめっとした暑さが身体にまとわりつく。そんな感覚に覚えはないだろうか。その不快感にも近しいものが本作には終始立ち込めており、主人公・遠馬が抱える鬱屈とした葛藤も相まって、目にする者に心の汗をたっぷりとかかせてくれることだろう。拭うことのできない父親に対する嫌悪感。しかし、そんな父親の血を誰よりも色濃く受け継いでいる自分自身。 その矛盾の狭間でもがき苦しみ、性欲に支配されているのか、血に支配されているのか、自身の感情や衝動の源泉を見極めることもできず苦悩し続ける遠馬が行き着く果てを、心の汗をダラダラに流しながら見届けていただきたい。 また、この難役に、当時19歳の菅田将暉が周囲の反対を押し切る形でオファーを受けており、本作に関して「俳優としての転機になった」と言わしめるだけの熱演を見せている点もご注目!その後の彼の活躍は言うまでもありませんが、2013年公開の本作を経てこそ今の彼があるのだということを存分に味わうことができる作品です。 『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(2017年・アメリカ)(配信:hulu / U-NEXT ) ■あらすじ 今年開催された第77回 カンヌ国際映画祭にて、最新作『Anora(原題)』が最高賞となるパルムドールを受賞したショーン・ベイカー監督作。安モーテルでその日暮らしの生活を送る6歳のムーニー(ブルックリン・キンバリー・プリンス)と、母親のヘイリー(ブリア・ヴィネイト)。厳しくはありつつも気にかけてくれる管理人のボビー(ウィレム・デフォー)が見守る中、モーテルで暮らす子供たちと楽しい毎日を送るムーニーに反して、仕事も見つからず次第に追い詰められていくヘイリーであったが……。 ~アメリカの社会問題を子供の視点を通して映し出すひと夏の物語~ タイトルにある「フロリダ・プロジェクト」とは、物語の舞台であるフロリダに実在するディズニーリゾートの開発時に名付けられた計画名のことであり、夢の国の周辺には多くの貧困者が住む安モーテルが点在している皮肉めいた現状のことを指している。そんな場所で暮らす親子の日常を、ときに明るく、ときに厳しく、ときにファンタジックに映し出す本作。 照りつける日差し、鳴り響く蝉の鳴き声、外ではしゃぐ子供たちと、微笑ましい夏の光景を目にしていられる内は、童心に帰ったかのような気持ちでムーニーたちの姿を見守っていられる。が、並行して描かれていくヘイリーが直面している問題を目にする度に、ムーニーがやがて行きつくかもしれない厳しい現実を直視させられる。真っ当に働くことをしないヘイリーがいけないのか。格差社会や貧困層を救済するための法が整備されていないのがいけないのか。他者に対して無関心で不寛容なこの世の中がいけないのか。 私たちが生きる現実に根差した数多の問題を浮き彫りにしていくこの物語に対して、明確な解決策を導き出すことは極めて困難であるが、ラスト85秒において目にできるものには、さまざまな可能性や希望が詰まっている。そのラストに、あなたの心は何を感じることになるだろう。 『ジョーズ』(1975年・アメリカ)(配信:Netflix/ U-NEXT ) ■あらすじ 映画界隈における夏の風物詩と言えば、「サメ映画」が欠かせない。『ロスト・バケーション』『海底47m』『MEG ザ・モンスター』など、近年だけでもさまざまな良作サメ映画が誕生しており、映画ファンにとっては欠かせないコンテンツのひとつと言えるだろう。 今回ご紹介する『ジョーズ』は、言わずと知れた名匠スティーヴン・スピルバーグ監督が27歳の頃に製作し、ジョン・ウィリアムズによる恐怖をあおるテーマ曲をはじめ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクションとしても広く認識されており、誰もが一度はそのタイトルを耳にしたことがあるであろう名作。 だが、その圧倒的知名度に反して、実際に作品そのものは観たことがないという方、意外に多いのではないでしょうか。1975年公開作品ということもあり、古臭さを危惧する方もいるかもしれませんが心配ご無用。公開から50年近く経つ今この時代に目にしても、色褪せることのないドラマや恐怖がそこにはある。 サメの存在に目を瞑り、目先の利益に囚われてしまう市長ら人間の愚かしさ。そんな市長らの口車に乗せられ、サメがいるビーチで和気藹々と楽しむ人々が陥る集団心理の恐ろしさ。そして、襲われる人間の視点をリアルに描き、あえてサメを映さないことで倍増する恐怖など、現代のサメ映画にも連なる原点を目の当たりにできるだろう。サメの恐怖、その原点をお楽しみあれ♪ ◇ 気になる作品はありましたか?涼しい室内にいながらもさまざまな“夏”を感じさせてくれる5作品が、夏の思い出を彩ってくれることを願います。それでは、熱中症に気をつけて良きお盆休みをお過ごしください♪ (C) 2005 ROBOT/東芝エンタテインメント/博報堂DYメディアパートナーズ/IMAGICA (C) 2020 PS FILM PRODUCTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED. (C) 田中慎弥/集英社 ・2013『共喰い』製作委員会 (C)2017 Florida Project 2016, LLC. (C) 1975 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED. ※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。 ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 WOWOW・宝島社sweet・DOKUSOマガジンでの連載のほか、ラジオ・配信番組・雑誌などで映画を紹介。イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30人のシネマコンシェルジュ」など幅広く活動中。
ミヤザキタケル