性行為中に薬物を使用する若者が急増中!?死亡事故も多発している海外の現状とは?
複数の専門家によるケア
リヨン大学病院の精神科医で依存症専門医であり、「Sea, Sex and Chems(原題)」(2020年)の著者であるドリアン・セッサにとって、ケムセックスのもたらす結果は、被害者にとっても、加害者にとっても深刻だという。「記憶にないことをした患者もいます。眠らず、飲まず、食べず、多くの物質を摂取することで、彼らは現実感を失ってしまう。ここには被害者しかいないのです」と彼は主張する。 どうすればケムセックスと闘えるのか? なぜ、この災いから逃れることが難しいのだろうか? 医師は警鐘を鳴らすように指摘する。「依存症治療センターは、これが薬物の摂取と性行為の両方に関連する共依存であることを理解していない」と彼は言う。さらに、治療は個別に行われ、依存症専門医、性科学者、精神科医などによる複数の専門家の支援が必要だと説明する。「重要なのは、患者が薬物依存は治療しても、性依存を治療しなければ、性行為の際に必ず薬物に手を出すことになるということ。なぜなら、その患者にとって、そのふたつが関連付けられているから」とドリアン・セッサは続ける。 被害を軽減しようと、問題の根源に迫ろうとする動きもある。その一例が、パーティ環境のリスク軽減に取り組む団体「プレイセーフ」のミシェル・マウ会長だ。彼は、これらの違法物質が販売されているサイトやアプリ(Snapchat、Tinder、Grinderなど)を追跡することを決めた。2020年、フランス薬物・依存症観測所(OFTD)は、約600種類の合成麻薬が市販されていることを報告している。「この市場を軽視することこそ、ケムセックスの台頭を助長している。ドラッグはクリックひとつで手に入るようになり、ますます安価になっている」とミシェル・マウ会長は強調する。 ミシェル・マウは、ゲイコミュニティでの犠牲者が増えないよう、公共機関に対して意識改革を呼びかけている。「ケムセックスは広まり、今ではあらゆるセクシュアリティに影響を及ぼしている」という。ジャン=リュック・ロメロはかつて、保健省にこの問題を提起した際、周囲から鼻であしらわれたことを嘆いていたが、パルマドの一件がきっかけで、状況は変わるかもしれない。「ケムセックスは多くの命を奪った。これ以上クリストフのような命を奪われたくはない」と彼は語る。 (1) 薬物・物質乱用に関連した死亡者数。 text: Léa Mabilon (madame.lefigaro.fr)
translation: Hanae Yamaguchi