女性の脱毛症はいまだ謎だらけ、女性の2~3人に1人が経験、男性の薄毛と何が違うのか
脱毛症を止めることは可能か
薄毛が気になる人には「薬や手術といった治療法があります」と、米ニューヨーク州にあるバーンスタインメディカル・毛髪回復センターで毛髪回復手術を行う医師のクリスティーン・シェーバー氏は言う。 現代の植毛手術には、FUT(follicular unit transplantation)法とFUE(follicular unit extraction)法の2つがある。どちらも、髪が多く生えている部分の毛包(通常は後頭部)を薄くなっている部分に移植するというものだが、男性型以外の脱毛症にはほとんど効かない。 また薬の場合、脱毛症の進行を止めることはできても、死んでしまった毛根を再生することまではできない。しかし、植毛手術を考えている人がその前に薬を使うのは効果的だと、シェーバー氏は言う。薬によって頭皮に残る毛髪が多ければ多いほど移植が楽になるためだ。 現在、男性型脱毛症の薬として米食品医薬品局(FDA)の承認を受けているのは、ミノキシジル(外用薬)とフィナステリド(内服薬)があり、日本ではさらにデュタステリド(内服薬)も承認されている。フィナステリドとデュタステリドは、テストステロンがDHTに変換されるのを防ぐ。 フィナステリドは、精神の健康と性的機能に長期間にわたる深刻な副作用を引き起こす恐れがあるため、英政府は2024年、患者に十分な説明を行い、薬の使用中は注意深く様子を見守るよう医師に呼び掛けた。デュタステリドについては、日本皮膚科学会のガイドラインで「性機能障害を含めた副作用についても十分な説明と同意が必要である」と指摘されている。 フィナステリドは女性にも効くとシェーバー氏は言い、「閉経後の多くの女性が、リスクを理解したうえでフィナステリドを使用し、効果を実感しています」と話すが、女性への使用は日米ともに承認されていない。また、女性の場合、乳がんのリスクが上がる恐れもある。 日本皮膚科学会は、女性型脱毛症へのフィナステリドとデュタステリドの使用について、「有効性が確立されておらず、また妊娠の際の副作用の問題などから行うべきではありません」とし、「女性型脱毛症の治療に最も勧められる薬剤はミノキシジルの外用剤です」と説明している。 シェーバー氏は、どんな治療を受けるにしても、まずは専門的な皮膚科医から正しい診断を受けることだと話す。髪を失う最も一般的な原因は男性型脱毛症とはいえ、ほかにも原因はたくさんある。そのほとんどは、FUT法でもFUE法でも元に戻せない。また、手術を希望する場合、経験があり信頼できる医師を慎重に選ぶことが必要だとアドバイスする。 とはいえ、脱毛症の人がみな治療を受けようと決意するわけではない。「なぜ(脱毛症を)病気とまで呼べるのか、単に加齢による自然な髪の減り方ではないのか、と批判する人もいるでしょう」とクリスティアーノ氏は言う。脱毛症と折り合いをつけ、自分の新しい見た目を好きになりさえする人も多い。
文=Elise Cutts/訳=荒井ハンナ