女性の脱毛症はいまだ謎だらけ、女性の2~3人に1人が経験、男性の薄毛と何が違うのか
女性と子どもの脱毛症
女性の2~3人に1人が、そうとわかるほどの脱毛を生涯のうちに経験するという。その最大の原因が、女性型脱毛症だ。 男性型と女性型の脱毛症にはいくつかの似た点があり、どちらもアンドロゲン性脱毛症(女性型はFAGA)と呼ばれている。しかし、アンドロゲンが女性型脱毛症に実際に関係しているのかどうかや、どう関係しているのかは明らかになっていない。そのため、近年では女性型脱毛症は「FPHL」とも呼ばれる。 一般的に、女性型脱毛症については男性型よりわかっていることがはるかに少ないと、ドイツのボン大学で脱毛の遺伝学を研究している遺伝子学者のステファニー・ハイルマン・ハインバッハ氏は言う。 「ほぼ男性ばかりを対象に臨床研究が行われてきた分野の典型的な例です」と指摘するのは、米コロンビア大学の遺伝学者アンジェラ・クリスティアーノ氏は指摘する。 男性型と同様に、女性型脱毛症も髪の毛が細くなるが、女性の場合は側頭部や頭頂部から薄くなるのではなく、全体的に薄くなる傾向にある。薄毛は髪の分け目から目立ち始めて、そこから外に向かって広がっていく。 男性型も女性型も、脱毛症は一般的に年齢が上がると発症するが、その時期は女性の方が男性よりも遅い(女性は40歳前後またはそれ以降、男性は30代またはそれ以前から気づく場合もある)。 しかし、10代や小さな子どもであっても脱毛症になることがある。その主な原因の一つである円形脱毛症は、自らの毛包を攻撃してしまう自己免疫疾患で、約50人に1人が一生のうちにかかる。 子どもや若い女性の場合、同年代で薄毛になるケースは少ないため、脱毛症はとりわけ心の傷になりうるとクリスティアーノ氏は言う。氏も自身が円形脱毛症になったことをきっかけに脱毛の遺伝学を研究し始めたという。
遺伝の影響は
男性型脱毛症は遺伝によるところが大きいと、ハイルマン・ハインバッハ氏は言う。「双子の研究から、80%以上が遺伝であると推定されています」 男性型脱毛症は母方から遺伝するという話を聞いたことがあるかもしれないが、それは単純化しすぎだと、メッセンジャー氏は言う。 確かに、薄毛に大きく関わっているアンドロゲン受容体遺伝子は母親から受け継ぐX染色体に含まれているが、ほかにも関連している可能性がある箇所はゲノム内に350以上あり、その多くが性染色体上にはないと、ハイルマン・ハインバッハ氏は指摘する。 女性型脱毛症の遺伝学や、女性型と男性型脱毛症の関係性についてはさらに不透明な点が多い。