昇進や「幻の赤ちゃん」抱える不安を軽減-女性役員育成の壁に挑む
一方、上位職志向のある女性社員の割合は13年度の41%から20年度には70%まで増加したが、コロナ禍をきっかけに減少し、22年度には58%となった。リモートワークの継続を望む社員が多い中で、管理職は出社率が比較的高く、労働時間も長い傾向にあることが背景にあるという。
「管理職の働き方があまり魅力的に映らないことが問題だ」と、丸井グループ人事部のワーキングインクルージョン推進担当の後藤久美子課長は話す。
今年初めて全国の管理職約300人を4回に分けて集め、働き方に関するディスカッションを実施。長時間労働が当たり前の環境で経験を積んできた管理職の間にも、若手の昇進意欲を高めるためには働き方を見直す必要があるという理解が広がり、後藤氏は手応えを感じているという。
悩みは変わらず
内部人材の育成過程では、将来のキャリア形成への不安を緩和することが重要と考えるのは、LIXIL人事部でダイバーシティー&インクルージョンを担当する小林真理氏だ。
同氏は、5社統合による11年のLIXIL誕生の前に技術職として入社した。当時と比べると技術職の女性は増えたものの、「悩みは大きくは変わっていない」と話す。
工場などの現場で働く若手の女性社員は早い段階から仕事と家庭の両立への不安を抱える傾向にあり、挑戦をためらってしまうケースもあるという。まだ結婚も出産もしていないのに想像するだけで心配になる状況を、「『幻の赤ちゃん』を抱えていると、どうしても制限された考え方になる」と説明する。
小林氏は、女性社員がこうした懸念を抱いていることにマネジャーが気付くことが大事だと指摘する。
LIXILは、30年までに日本での新卒採用で男女同率を目指すほか、取締役と執行役の女性比率を50%とする目標を掲げる。丸井GとLIXILは、女性活躍推進に優れた企業として「なでしこ銘柄」に複数回選定されている。
投資家の目
山口教授は、社内から起用する女性役員を増やすには、30歳代、40歳代からの長期にわたる育成に加え、性別役割分業の解消も必要と考えている。