「食べることと農業はつながっている」 キュウリ農家に転身、見つけた答え
「自分のよりどころになる場所を持って」
――農業に携わるようになって、食に対する思いは変わりましたか。 以前は、忙しいときはエネルギー源を口に入れればいいと思っていました。食べ物から命をいただいているという実感がなかったんですね。でも今は自分の日常として農業があって、命があって、それがつながって私は生きているんだな、と感じられています。 食べるものを自分で育てていることが安心感にもつながって、日常の感じ方が変わりました。その感覚を、農業をやっていない人にも感じてもらえたら、少しでも身近に安心を感じて生きられる人が増えたらいいなと思って、グループの活動や個人の発信をしています。 ――最後に、同じAG世代に「いちばん話したいこと」はありますか。 同世代で一緒に仕事をしていた人たちには、「山梨に来て」と伝え続けています。都心で働くのは結構ストレスフルだし、スピード感も速いし、どんどんアウトプットしないといけない。経済を動かして、楽しいこともいっぱいあるけど、体や心に負荷をかけている側面があります。田舎を持たない人も増えているから、自分のよりどころになる場所を持ってほしいですし、働きながら深く関われる土地を見つけてほしいと思います。地方都市は人口が減っているので、お互いがつながることでどちらも潤うような交流ができたらいいですよね。 自分がやりたいと思ったことをそのタイミングでチャレンジするのは、簡単なことではないけれど、一歩踏み出してみると、また違う自分がそこにいて違う感覚が生まれるし、面白いこともあります。「こんなはずじゃなかった」と思うことがあったとしても、自分の人生を選べるのは幸せなことで、ひとつのヒントになればいいなと思います。 取材&文&写真=朝日新聞社 Aging Gracefullyプロジェクトリーダー/編集長 坂本真子 片山 京子(かたやま きょうこ)さん 1978年8月、東京都生まれ。1999年から損害保険会社系のシステム会社でプログラミングの仕事をした後、2017年、山梨県南アルプス市で新規就農。2019年に設立された「やまなし農業女子」代表。食の検定「食農1級」の資格を持ち、農園パン&料理教室の講師、「食と農のかたりべ」なども務めています。 ◇Instagram https://www.instagram.com/kyokokata/ ◇やまなし農業女子 http://yamanashinj.com/ ◇fumotto(フモット)南アルプス https://fumotto.jp/ 40代と50代、Aging Gracefully(AG)世代の日本の女性たちの生き方は、どんどん多様化しています。最も多いライフコースは「専業主婦」だという調査結果がありますが、それでも4割に満たず、家族の形も働き方もさまざまです。 「AG世代がいちばん話したいこと」は、そんなAG世代の女性たちが、いま最も伝えたいこと、生の声をお届けします。
朝日新聞社