【税理士が教える】妻名義の預金に要注意! 税務署が絶対、見逃さない「意外な申告漏れ」とは?
親が相続対策しないまま亡くなると、残された家族や子どもは、膨大な手続きに苦労したり、争族に巻き込まれたり、相続税が払えなかったり…と、多大な迷惑をこうむります。本連載では、知識のない親御さんでも、ステップ式で5日で一通りの相続対策ができる『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)を出版した税理士の板倉京さんが、最低限やっておくべき相続対策のポイントを本書から抜粋して紹介していきます。 ● 相続時、妻名義の預金が脱税疑惑に!? 「奥様名義のこの預金はご主人の相続財産です。相続税の申告漏れです」。 亡き夫の相続税の税務調査。税務署が家に調査に来るなんて、それだけでも恐いのに、思いがけない言葉に佐藤裕子さん(65歳 仮名)は思わず涙ぐみました。 「妻の預金が夫の相続財産って、どういう意味?」と思われるかもしれませんが、相続税の税務調査では、このような指摘を受けることはままあります。いや、むしろ税務調査の目的の大部分はこの「名義預金」探しなのです。 相続税のルールには、一般の生活感覚では理解しがたいものがあります。その一つが「夫の稼いだお金は妻名義の預金でも夫の相続財産である」という考え方です。こんなことを言うと「夫の給料は、夫だけのものではない!」と非難を浴びそうですが、実際税務署はそう思っています。 ● 夫が稼いできたお金は夫の財産? とはいえ、夫の稼いだお金を使ってはいけないというわけではありません。 裕子さんの夫は会社員でした。裕子さんは専業主婦で2人の子どもを育て上げました。家のローンを含め、お金の管理は裕子さんの仕事。 夫の給与口座から毎月生活費を引き出し、それを裕子さんの通帳に入れてやりくりをしていました。そして、余ったお金で友達と食事や旅行に行ったり、時には子や孫にお小遣いをあげたりしていました。 このように、夫の給料を妻が自分の口座に移して自由にお金を使っていても、「扶養義務者の生活費を賄う」という範囲であれば、たとえ海外旅行に行きまくっても、ブランドバッグを買っても税務署は関知しません。妻は財産の管理者で実際の所有者は夫だと考えているからです。 ● 専業主婦の預金が問題になるのは相続の時 問題になるのは、相続の時です。 特に問題になりやすいのは、専業主婦の妻や子・孫名義の預金や証券口座にたんまりとお金が残っているようなケース。 裕子さんの口座には2000万円程度の預金がありました。税務署は、専業主婦だった裕子さんの通帳にこんなに残高があるのはおかしい、と目を付け税務調査に来たのです。 裕子さんからすれば「これは私の財産。結婚して約40年間、夫にもらった生活費をやりくりして貯めたんだから」と納得できません。でも、税務署にはその言い分は通用しません。「夫が稼いできたお金は、誰の名義になっていようと夫のもの」なのです。 もちろん本当に「私のお金」ならば、夫の財産にはなりません。親からもらった相続財産だったり自分で稼いだもので夫とは関係ない、のであれば、そう主張すべきです。もし、「夫からもらった」と主張するなら、「贈与があった」ことを証明しなければなりません。しかし、「あげた(と思われる)」夫は既に亡くなっているため、贈与を証明するのは困難です。 贈与されていない夫の稼ぎから出た生活費の残りは、税務署ルール的には、間違いなく夫の財産ですから、相続税で申告しないでいると後からペナルティを科されます。このルールを知らない人が多いので、税務署はせっせと名義預金探しの税務調査を行うのです。 ● 生活費で残った分は贈与だと証拠を残す 相続税がかかりそう、かつ、妻に渡した生活費の残り(へそくり)は相続税の対象にしたくないのなら、今後は夫婦間でも、贈与であることをはっきりさせ、証拠を残すようにしてください。これが税務署のルールから身を守る方法です。 毎年、生活費で残った分についての贈与契約書を作り、年間110万円を超える場合は、贈与税の申告をします。 既に、妻の口座に多額の残高がある場合は、夫の口座に戻すという方法もありますが、金額が大きい場合は税理士に相談することをおすすめします。 ● 教訓 生活費の残りを夫の相続財産にしたくないなら、 贈与契約書を作る→(本書p168も参照) *本記事は、板倉京著『子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための たった5日で相続対策』(ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集して作成しています。
板倉 京