「日本は限りない可能性を秘めた国」元内閣官房参与・加藤康子氏が示す、日本が目指すべき「ものづくりのあり方」
森田;再生可能エネルギーというのはコストが高いとよく言われますが、実際そうなんですか? 加藤:そうです。再エネを作れば作るほど電気代は上がると理解していただきたいと思います。ですから、地元で太陽光発電、メガソーラーができたりすると、それが皆さんの電気代にかかってくるということを理解していただきたいと思います。 森田:今のエネルギー基本計画を見ると、その再生可能エネルギーの中でも、一番比重を占めているのが太陽光で、14~16%、その後が水力、そして風力と続くわけですが、日本はこれからの次のエネルギー計画でもこの太陽光を増やしていこうということになるんですかね。 加藤:世界の二酸化炭素からいいますと、中国が30%以上を排出しているわけで、日本はわずか3%です。その日本が自らを削ることによって本当に世界の環境が良くなるのかと。バランスのとれた政策にしていかなければ問題があるのではないかと思いますし、「再エネ」になると必ず電力は高くなります。それこそ、安定した電力ではないわけです。 森田:そうですね。雪国なんかでは太陽光はかなり難しいですよね。 加藤:難しいですね。それから、例えば夜間は発電しないわけですから、その時にはどうするかといいますと、バックアップ電源は火力で調整してるわけですね。火力を減らすという中で。 森田:結局、火力が必要なんですね。 加藤:必要なんです。ところが、この「脱炭素」のなかで、火力(発電所)を作ってはいけないと。ベースロード電源である原発も、このままいくとどんどんどんどん老朽化して廃炉が進むと。そういった中で、これから5年、10年後に影響するようなエネルギー基本計画では、ベースロード電源といわれる原子力と火力、これは世界一の技術を持っているので、きちっと国民の暮らしを守るためにしっかり位置づけていただきたいと。 森田:岸田総理は去年の夏にGX、グリーントランスフォーメーションの会議(GX実行会議)で、次世代の革新的原子炉の開発や建設に向けても検討していくことを表明しました。これまでのエネルギー政策を転換したと大変大きな報道がありましたが、こういった意味では、この革新的原子炉といったものもどんどんこれからは新しく作っていかなくてはいけないということになるんでしょうね。 加藤:本当に私はそれをきちっと、次の第7次エネルギー基本計画に織り込んでほしいと思ってるんです。稼働60年を超えても運転可能になるGX電源法(2025年施行)もありますが、原子炉の老朽化したものは、その延長だけではなくて、それをリプレースして新しく設置する、そして増設するといったことも、第7次エネルギー基本計画に織り込むことによって、東日本大震災前は全体の30%だった原子力、それを目指すべきだと私は思います。 森田:今20~22%にしようというのが今のエネルギー基本計画ですが、これを30%ぐらいにしていくと。この原子力の技術は日本は今、どうなんでしょうか。 加藤:G7の中で、火力の、例えば蒸気タービン、ガスタービン、ボイラー、それから原子力……全てにおいてですね、エネルギー産業の様々な設備を建設する技術は世界一です。 森田:全ての発電機の製造の能力、日本はそんなに高いんですか。 加藤:そういう人材がいる間に、きちっとした形で、やはりリプレース、新規のものを作っていくということが必要になってくると思います。 森田:だから、今ある原発のような大型ですごい敷地にというものではなくて小型のものであるとか、「革新的」というのはいろんな形で原子力、原子炉が作れるということなんでしょうね。 加藤:そうです。そして、福島第一原発事故の後、いろいろな研究が安全性においてもされておりまして、例えば飛行機が突っ込んだ時でも耐えられるような原子炉を作っていこうというので、いろんな研究をされてるんです。 森田:本当に、世界でトップクラスですね。 加藤:それから次世代原発の開発では、例えば高温化ガス炉の技術を日本はポーランドやイギリスなどへ出していますが、日本で貯蔵からすべての設備をつくれるようになっているんです。それこそ、明治からずっとタービンを作ってきた日本ですからね。 森田:ものづくりの力は続いてるんですね。 加藤:続いているんです。100年以上作ってるわけですから。そういう点では世界一の技術だと思います。