「重くて、遅い」パナソニックはAIで変貌できるか、18万人規模で導入し現場主導の企業文化を目指す
■「Yohanaメンバーシップ」でのAI活用 一方で、製品やサービスと融合したAIでは、白物家電での活用が先行している。冷蔵庫では、3週間分のドア開閉と収納量の変化を、曜日ごと、1時間ごとに分析。予測結果をもとに当日の使用状況と合わせて、省エネ運転するほか、最新モデルでは、上部に搭載したAIカメラで、野菜室の中身を自動認識してリスト化。保存期間の観点から早めに使う野菜を選び、それを使ったレシピ提案を行うこともできる。
そのほか、B2B領域では、空港の出入国管理をはじめとした顔認証によるAI活用、Blue Yonderのオートノマスサプライチェーンの構築に向けたAI活用などがある。 ユニークなのが、ファミリーコンシェルジュサービス「Yohanaメンバーシップ」でのAI活用だ。毎日の献立と買い物リストの作成、子どもの習いごと探し、週末の旅行の手配など、日常生活の細かな困りごとを代行するサービスで、利用者を支援するガイド、スペシャリスト、リサーチャーが、最適なサービスの検索時間を短縮したり、サービス品質を向上したりといったことに生成AIを活用している。これにより、1人ひとりに合わせたサービスに進化させることができている。YohanaメンバーシップにおけるAI活用は、まだ緒についたばかりだが、この経験がパナソニックグループのAI活用を次のステージに引き上げることになると関係者は語る。
このようにパナソニックグループでは、数多くのAIを利用している。林立するAIの数を見ると、社内でも混乱が起きそうなほどだが、玉置グループCIOは「ひとつのAIでは、すべてが賄えない。また、誰かがすべてを管理し、承諾するという仕組みでは、AIの活用が遅れるだけである。AIが林立すること自体は悪いことではない。それによって混乱が起こるという怖さもない」とする。そのうえで、「大切なのは意図を持って林立させること。そして、AI倫理規定をひとつにすることである」とする。