パリで勝つ!そしてロスへ!スポーツメーカーに独占密着“もう一つの五輪”
パリ五輪開幕まで1カ月を切った7月9日。ミズノの協力工場「トーヨーニット」(三重・四日市市)では、池江選手が本番で着る水着の最終製作に取り掛かっていた。「背閉じ」にしてから試作すること3回。急ピッチで作業が進められるが、ミリ単位の精密さが求められる。「レース前のアップで1回着るかどうか。いきなりレースだと思う」と大竹さん。 こうして水着は完成し、池江選手のリクエストに応えることができた。
7月27日。パリ五輪の競泳会場に入った大竹さんは双眼鏡を取り出し、手元の資料に何かを書き込み始めた。各選手がどのメーカーの水着を着ているか、チェックするのだ。 例えばあるレースでは、ミズノ着用者が1人なのに対し、フランス発祥のブランド「アリーナ」が4人と半数を占めている。「全世界のシェアが分かるので、将来的にはオリンピックの場でも高いシェアを取れるようにしていきたい」と大竹さん。オリンピックは、スポーツメーカーにとっても闘いの場なのだ。 個人種目でのオリンピック出場は、8年ぶりとなる池江選手。大竹さんが開発した「背閉じ」タイプの水着で、「女子100mバタフライ」準決勝に臨むが……。
“眠り”で選手を支える! 日の丸マットレスが挑むパリ五輪
去年11月、柔道81㎏級の永瀬貴規選手(パリ五輪で金メダルを獲得)が、寝具メーカー「エアウィーヴ」本社(東京・大手町)を訪れた。ここには、全身の画像をもとに、AI(人工知能)が最適なマットレスを選ぶ独自のシステム「マットレス・フィット」がある。 エアウィーヴのマットレスの一番の特徴は、内部がスプリングではなく、エアファイバー(樹脂製の繊維)を使っていること。おすすめのマットレスを試した永瀬選手は、「いいです。しっかりした睡眠が取れれば、次の日も良いパフォーマンスにつながる」と話す。
エアウィーヴは長年アスリートに寝具を提供し、そこで得たデータを開発に生かしてきた。この会社を一代で築き上げた会長の高岡本州さんは、この日、社員を前にあるチャレンジを明かした。 「オリンピック選手が戦う前の日は『人生で一番大事な日』。そこに選ばれたかった。寝具を1万6000台(選手村に)納める」。 パリ五輪 選手村で使われる寝具に、エアウィーヴが採用されたのだ。高岡さんは今回のオリンピックを、欧米市場を開拓するための突破口にしようと考えていた。