パリで勝つ!そしてロスへ!スポーツメーカーに独占密着“もう一つの五輪”
愛知・幸田町にあるエアウィーヴの工場では、選手村に搬入するマットレスの生産が始まっていた。釣り糸を作る技術を応用して独自のマットレスを作るが、このマットレスには画期的な特徴があった。表裏で寝心地を変えられるように、作る段階で硬さを変えているのだ。上下の繊維の密度を変えることで、硬さの違いを出すことができる。
さらに、硬さが違う3つのマットレスを用意。これを、上・中・下と部分ごとに組み替えることで、より自分好みの体形にフィットした寝具になる。
3月4日。セーヌ川沿いに建設された選手村では、マットレスの設置作業が進められていた。エアウィーヴからは5人のチームが送り込まれ、約3カ月で1万6000床の寝具を運び込む。フレームはリサイクル可能な段ボールを使用し、1床ずつ組み立てていく。 しかし、フランス人の作業者から完成の報告があり、部屋でチェックしてみると、フレームの一部は破れ、マットレスをセットする基本の順番が無視されていた。結局、日本から来たスタッフが一つ一つ直していくことに。
3月13日、高岡会長が選手村にやって来た。この日、国際オリンピック委員会(IOC)の関係者が、ベッドの搬入状況を確認することになっていた。IOCの関係者が「フランス国内でリサイクルできる?」と尋ねると、「できる。ごみにはならない」と答える高岡さん。史上最も環境に配慮することを目指した今回のオリンピック。実は、フランス国内で全てリユース、リサイクルできることが、寝具の選定条件の一つになっていた。そのために、高岡さんが打った秘策とは……。
“逆襲のアシックス”…起死回生のシューズ開発プロジェクト!
6月2日。岡山市のグラウンドでは、女子マラソン日本代表の前田穂南選手が練習していた。前田選手は、今年1月の選考レースで、19年ぶりに日本記録を更新。その時に着用したシューズを開発したのが、国内最大のスポーツメーカー「アシックス」だ。
このシューズを手掛けたのが、開発責任者の竹村周平さん。過去アシックスは、軽量化を追求した薄底シューズで世界を席巻。多くのメダリストの足元を支え、栄光を共にしてきたが、アメリカの「ナイキ」が開発した厚底シューズの登場で、状況は一変。陸上長距離界は、厚底一色に塗り替えられてしまった。 そこで過去の栄光を捨て、新たに取り組んだのが、独自の厚底シューズだった。世界中のアスリートから膨大なデータを集め、イチからスタート。目指したのは“勝てるシューズ”の開発だ。