いまやSUSHIの勢いに負けている? 寿司職人が危惧する「日本の安値志向」
海外で勢いを増す、寿司業界
ここ近年寿司業界は海外のほうが勢いがありますね。海外に行くと、富裕層が日本と比べものにならない。とにかくお金に糸目をつけないから、いいものを出せと...。マレーシアやタイ、シンガポールでも高級な寿司屋が人気になっています。日本は低価格志向になってしまった。これはさびしいことだと私は思います。 以前、お客様のお子様に「パパ、ここのお寿司回ってないよ」と言われたことがあります。決して回転寿司が悪いとは言いません。私も好きですし。でも回転寿司だけで育ってしまうと、本来の寿司店が「なんでこんな高いの!?」となりますね。きちんと使い分けるといいですよね。普段は回転寿司だけど、年に2回はいいところで食べるとか。 何度も言いますが、決して回転寿司を否定してるわけじゃなく、値段値段だけでやってもらいたくないということです。 安いものを追い求めていると、人件費を減らすしかなく、従業員の給料だって下がります。雇用もダメになって、全体的におかしくなっていく。せっかく日本人は勤勉で作るものの品質も海外で絶賛されているのだから、それなりにブランド化してプライドを持ってやってもらいたいものです。 以前の海外では、寿司といえば巻物というイメージでした。日本では、寿司といえば、巻物よりにぎり寿司をイメージします。その考え方がまったく違っていて、海外に行くと以前なら、私がにぎりをやっても誰も興味を示しませんでした。 ただご飯の上にネタがのってるだけじゃないか、というイメージだったのが、2011年に『二郎は鮨の夢を見る』(原題:Jiro Dreams of Sushi)という銀座の「すきやばし次郎」の店主であり、90歳を超える年齢の寿司職人・小野二郎氏の物語を描いた映画が、アメリカで公開されて、大ヒットとなりました。寿司職人のあり方が描かれている、ミシュラン史上最高齢の3つ星シェフのドキュメンタリー映画です。これが日本の寿司職人のイメージを変えました。 普段から手を守るためにずっと手袋をつけて、こだわって仕込みをする一つのにぎりに込めた寿司職人の映画で、それからにぎりへの世界の関心が一気に増えました。前まではそんなことは一切なかったけど、海外からにぎりを教えてくれという依頼も増えてきて、周りからの寿司職人への見方が変わってきました。 実際のところ寿司職人と日本料理職人はあまりよい関係ではありません。日本料理は関東や関西など、地域により、流派や派閥があるのですが、寿司の業界は地域によっていろいろな寿司の種類はありますが、全国の組合は一つにまとまっています。 日本料理の職人は、寿司職人を下に見ている人が多かった。日本料理の仕事は大変で、八寸、焼き物、煮物、花板など、一人前の職人になるのにとても時間を要します。最近、寿司ブームとともに寿司職人の見方が変わって、寿司に対するこだわりなど、さまざまな点で見直されてきました。 最近では、職業として寿司職人を目指す人が増えてきています。あとは、その人の性格にもよります。接客や会話が好きな人は寿司職人が向いているし、接客よりも裏方で料理に集中したい人は日本料理の職人が向いています。