日銀・黒田総裁会見4月27日(全文1)展レポに2%の物価安定目標、明記なし
日銀は27日の金融政策決定会合で、「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)から、物価上昇2%の目標達成時期の見通しを削除した。短期金利をマイナス0.1%、長期金利(10年物国債金利)を0%程度に抑える現行の金融政策については据え置くことを決めた。会合終了後、黒田東彦総裁が会見し、物価目標の時期削除などについて説明した。黒田総裁にとっては今月9日の再任以降で初の決定会合だった。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは「【中継録画】日銀・黒田総裁が決定会合後に記者会見(2018年4月27日) 」に対応しております。
会合結果と展望レポートの概要について
朝日新聞:幹事社の朝日新聞【サイトウ 00:00:29】です。よろしくお願いします。総裁、まず本日の金融政策決定会合と、同時に公表された展望レポートの概要についてご説明ください。 黒田:はい。本日の決定会合では、長短金利操作、いわゆるイールドカーブコントロールの下で、これまでの金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定しました。すなわち、短期金利について、日本銀行当座預金のうち政策金利残高に、マイナス0.1%のマイナス金利を適用するとともに、長期金利について10年物国債金利が0%程度で推移するよう、長期国債の買い入れを行います。また、長期国債以外の資産買い入れに関しては、これまでの買い入れ方針を継続することを全員一致で決定しました。 本日は、展望レポートを決定、公表しましたので、これに沿って先行きの経済・物価見通しと、金融政策運営の基本的な考え方について説明します。 わが国の景気の状況については、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働く下で緩やかに拡大していると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は総じて見れば、着実な成長が続いています。そうした下で、輸出は増加基調にあります。国内需要の面では、設備投資は企業収益や業況感が改善基調を維持する中で増加傾向を続けています。個人消費は、雇用、所得環境の着実な改善を背景に、遅れを伴いながらも緩やかに増加しています。住宅投資は弱含んで推移しています。この間、公共投資は高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移しています。 以上の内外需要の増加を反映して、鉱工業生産は増加基調にあり、労働需給は着実な引き締まりを続けています。また、金融環境は極めて緩和した状態にあります。 先行きについては、2018年度は海外経済が着実な成長を続ける下で、極めて緩和的菜な金融環境や、政府支出による下支えなどを背景に、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられます。2019年度から2020年度にかけては設備投資の循環的な減速や消費税率引き上げの影響を背景に成長ペースは鈍化するものの、外需に支えられて景気の拡大基調が続くと見込まれます。2019年度までの成長率の見通しを従来の見通しと比べますと、幾分、上振れています。 次に物価面では、企業の賃金、価格設定スタンスがなお慎重なものにとどまっていることなどを背景に、エネルギー価格などの影響を除いてみると、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べて弱めの動きが続いています。もっともマクロ的な需給ギャップが改善を続ける下で、企業の賃金、価格設定スタンスが次第に積極化し、中長期的な予想物価上昇率も高まるとみられます。この結果、消費者物価の前年比はプラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。 2019年度までの物価見通しを従来の見通しと比べますと、おおむね不変です。すなわち2019年度ころに2%程度に上昇率を高めていくという日本銀行の中心的な見通しは、前回展望レポートから変わっていません。 リスクバランスについては、経済に関しては、2018年度はリスクはおおむね上下にバランスしていますが、2019年度以降は下振れリスクのほうが大きいとみています。物価に関しては、下振れリスクのほうが大きいとみています。物価面ではマクロ的な需給ギャップが改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も次第に高まるとみられる下で、2%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠けており、引き続き注意深く点検していく必要があります。 なお、展望レポートについては片岡委員が消費者物価の前年比について見通し期間中に2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いほか、金融緩和のコミットメントを維持する観点から引き続き2%程度に達する時期を明記すべきとして反対されました。 コミットメントについて申し上げれば、日本銀行は2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現することとしており、この点はこれまでと変わりません。日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。 また、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続します。今後とも、経済物価金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため必要な政策の調整を行います。以上です。