一番風呂譲り合い合戦!? 嫁に気を遣いすぎて意地でも最後に入りたがる姑。SNSで大人気! 愉快痛快な家族の日常【書評】
ほのぼの家族のマンガエッセイは数あれど、「えっ、これ私の家!?」と錯覚しそうになるエッセイ『チリもつもれば福となる 愉快なチリツモ一家』(チリツモル/KADOKAWA)。本書では、日々の忙しさから、記憶の彼方に押しやられているありふれた日常の中のワンシーンにパッと光があたったようなエピソードがたくさん紹介されている。 【漫画】本編を読む
著者・チリツモルさんを取り巻く個性的な家族の面々。どんなに雑に扱われてもめげない家族想いの夫、クールだけど優しい長男、可愛くて一番のムードメーカー・次男、そして幸せすぎると変顔になる母など、おもしろ一家たらしめる、一癖も二癖もありそうなキャラが登場する。でも、それはチリツモル家に限ったことなのだろうか。いや、そんなことはない。端からみたらなんてことない日常が、当事者である自分たちにとってはやたらにおかしくて、何度も思い出し笑いをしてしまうこともあるだろう。 ほのぼのとした日常の中に地雷のように埋め込まれたおもしろすぎるエピソードの数々の中に、身に覚えがある内容が潜んでいる。SNSでも大人気のお義母さんエピソードでは、息子の嫁に気を遣いすぎて、お風呂は自分が最後に入る! 絶対に譲らない! という奇行ともいえるような行動が紹介されている。程度に差はあれど、なにかがおかしい家族の行動に覚えはないだろうか。家族で交換日記をしていたエピソードでは、日記の中で「今、お茶沸いたよ」の文字が…。「え、それ直接言ってよ」というエピソードの1つや2つ、あなたのグループLINEの中にも転がっている…のではないだろうか。 そう、この作品の何気ない日常は、きっとどこかであなたの日常にも繋がっているのだ。 チリツモルさんの独自の視点を通して、家族みんながお互いを思い合い、ありのまま受け入れている様子がさらりと描かれている。母子の手遊び「ポッポちゃん」のエピソードでは、母が自分の手を動物のように動かして遊んでくれた「ポッポちゃん」遊びにご執心の娘に疲れてしまい、半ば放心状態で付き合う母の姿が…。子どもの興味関心にとことん付き合いきるなんて、家族だからこそ、そう簡単にできることではない。そんな笑いの中に温かさも感じられるエピソードが満載だ。 タイトル通り、チリツモル家では、ちいさな日常を積み上げて福を育てているわけだが、あなたの日常にも福は転がっているハズ。読んでいると思わず笑っちゃったり、しみじみ昔を思い出したりと、知らないうちに元気になれること間違いなし。どこまでもゆるゆるなエピソードにどっぷり浸かって、パワーチャージしてほしい。 文=ネゴト / ニャム