鹿島の新監督に就任した“レジェンド”岩政大樹はチームを再建できるのか…タイ、岡山、東大などで経験と勉強を重ねた苦労人
鹿島は現時点で2018シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇を、国内に限ればJ1リーグと天皇杯の二冠を獲得した2016シーズンを最後にタイトルから遠ざかっている。今シーズンもYBCルヴァンカップですでに敗退した。 別の意味での厳しさも、岩政氏は身をもって経験している。 黎明期の鹿島の最終ラインを支え、1998年フランス、2002年日韓共催両大会でワールドカップ代表に選出された秋田豊氏(現いわてグルージャ盛岡監督)は、33歳だった2003シーズン後に名古屋グランパスエイト(当時)へ移籍している。 入れ替わるように鹿島へ加入した岩政氏との世代交代だったが、岩政氏自身も31歳だった2013シーズンのオフに契約を更新しない旨を告げられている。米子北高から加入して3年目を終えようとしていた、昌子源(現ガンバ大阪)への世代交代をフロント主導で加速させるためだと説明され、昌子へエールを残して退団した。 しかし、鹿島で受け継がれてきた世代交代の時期や方法が、若くして海外への挑戦を求めるケースが激増している状況下で大きく変わってきている。 ヴァイラー前監督の解任につながった、直近のリーグ戦5試合で3分け2敗と勝てなくなった失速も、10ゴールをあげていま現在もJ1得点ランキングのトップタイに名を連ねるFW上田綺世(23、サークル・ブルージュ)の移籍がきっかけだった。 それでも、他のクラブの追随をまったく許さない20個ものタイトルを獲得し、いつしか常勝軍団と呼ばれるようになった鹿島の歴史と宿命を踏まえながら、新指揮官はクラブを通じて発表したコメントをこんな言葉で締めている。 「そのために、伝統ある『これまでの鹿島』を正しく定義し、新しい時代の『これからの鹿島』を選手たちと一緒に、そして皆さんと一緒に、手探りで見つけ出していきたいと思っています。鹿島が鹿島であるために。カシマがカシマであるために」 鹿島を退団した後の岩政氏は、2014年にタイ・プレミアリーグのテロ・サーサナ(現ポリス・テロ)へ移籍。12年ぶりのタイトルとなるリーグカップ制覇に貢献するもわずか1年で退団し、2009シーズンからJ2へ参戦しながら、なかなか上位進出への壁を打ち破れなかったファジアーノ岡山へ新天地を求めた。