新宿在住・生活保護の45歳男性、青森には足の悪い高齢母がひとり暮らしも「地元には仕事がないから戻らない」【社会学者が解説】
若者期と高齢期に挟まれた35歳から64歳のミドル期のひとり暮らしが増加しています。シングル化の傾向は日本全土で強まっていますが、特に東京区部で卓越して進行しています。本記事では、宮本みち子・大江守之編著、丸山洋平・松本奈何・酒井計史著「東京ミドル期シングルの衝撃」(東洋経済新報社)から一部抜粋・編集して、ミドル期シングルにおける親との関わり方の実態を解説します。 【早見表】年金に頼らず「1人で120歳まで生きる」ための貯蓄額
すでに存命でないケースも多いが…親との交流頻度
まず、ミドル期シングルの人々が、親とどのような交流をしているのかをみてみましょう。 親の状態をみると、親の健康は40代までは父母共に良い状態にありますが、50代に入ると3割強の父母は健康が良くない状態にあります。50歳未満の人では、父親4人に1人が亡くなり、50歳以上の人では7割が亡くなっています。一方、母親に関してはそれぞれ1割、4割が亡くなっています。つまり、ミドル期後半まで母親が存命の人は少なくないのです。 ではシングルは親とどのくらい交流しているでしょうか。交流頻度をみると男性と女性とで大きな違いがあります。男性は年数回の交流が最も多いのに対して、女性は週1回以上、月数回が多くなっています。週1回以上の頻繁な交流をしているのは女性で、男性を大きく上回っています。 年齢でみると図表1の通り、女性の場合60~64歳で最も交流が多く、週1回以上が半数を占めるのは、高齢に達した親を気遣っているからではないかと思われます。これらの人の中には親が遠方にいる場合もあることをみると、携帯電話やSNSによる交流が頻繁に行われているのではないかと思われます。それとは対照的に同年代の男性にはそのような傾向はみられません。 インタビュー調査から、親子関係がどのように維持されているのかをみてみましょう(新宿区新宿自治創造研究所[2014])。毎日電話している女性、誰かとつながる必要を自覚して親との関係を復活させた女性、未婚の息子を頼る孤独な母親の姿が浮かびます。 ・宮城県の親とはほとんど毎日電話をしています。(47歳女性) ・母親とはあまり仲がよくなかったのですが、最近やっと話せるようになりました。仕事中心の生活で、母親と話すことは時間の無駄ぐらいに感じていましたが、自分ひとりでは生きていけない、大きな仕事をしようと思ったら、誰かとつながっていないと何もできないという思いをもつようになってから、いろいろ話すようになりました。(41歳女性) ・母親は寂しいようで、よく電話をかけてきます。毎日かけてくることもありますよ。姉や弟は結婚しているので、気兼ねしているみたいです。母親の電話に出なかったら怪しむでしょうし、母親は家も知っているので、何かあったら来ると思います。(43歳男性)