新宿在住・生活保護の45歳男性、青森には足の悪い高齢母がひとり暮らしも「地元には仕事がないから戻らない」【社会学者が解説】
遠方の親との交流頻度
親との地理的距離(出身地でみる)でも関係をみてみましょう。 図表2は、出身地との関係を示しています。男性と女性とでは傾向がまったく異なっています。男性の場合、出身地が遠くなるほど交流頻度は下がり年数回が多数を占めるようになります。一方女性の場合、距離による違いはそれほどなく、週に1回以上、または月に数回の交流をしている人が少なくありません。なお、東京区部出身者の場合は週に1回以上接触している人が男性で約4割、女性で約5割と接触頻度が高くなっています。日常的に親と行き来している人が少なくないものと思われます。 東京区部出身の女性は、身内が近くに複数いるので頻繁に連絡をとっているといっています。 ・家族はみんな都心にいるので、すぐ連絡を取り合えます。(41歳女性) なお、「ほとんど交流がない」という人に限ってみると、男女とも必ずしも親が遠方にいるとはいえません。距離のバリアのために頻度が低いというよりも何らかの理由があって疎遠になっていることが感じられます。 本人の年収が親との交流頻度に影響を与えている? 交流頻度が経済状況と関係するかどうかを「年収」でみると、図表3の通り、週1回から年数回までに関してはそれほど大きな違いはみられません。一方、「年収300万円未満」の層に限ってみると、親との交流が「ほとんどない」人がやや多くなっています。特に男性にその傾向がみられます。 ・実家には用事がない限り電話もしませんし、実家からも連絡は来ません。(37歳男性) ・母親が青森に住んでいて、たまに連絡をとるくらいです。母は足が少し悪いですが健康です。青森には仕事がないので、母も戻って来いとはいいません。(45歳男性、生活保護受給) おひとりさまは正月を誰と過ごす? 次に、親との交流の具体的例として、正月を誰と過ごすのかをみてみましょう。親のいない人は除外した上で、年齢でみると、図表4(左)の通りで、若いときほど親と過ごす比率が高くなっています。男女で比べると、どの年齢でも女性のほうが10%以上上回っています。出身地による違いはありません。 正月に郷里で過ごすには費用がかかりそれが障害になる例もあると思われますので、年収との関係をみますと、図表4(右)の通りで、300万円未満層で正月を親と過ごす人が顕著に少なく、男性では300万~500万円未満でもややその傾向がみられます。先にみた交流頻度と比べて年収との関係が顕著に出ているのは、実家に帰るための費用が障害になっているのかもしれません。 ただし、日頃の交流頻度が少ない場合でも正月をともに過ごす比率が高いのは、正月というものが身内で過ごす行事として定着し、シングルにとっては親と正月を過ごすことが年中行事となっているのだろうと思われます。