【脅威】南海トラフ巨大地震でも発生する恐れ 東日本大震災で街を飲み込んだ「黒い津波」の正体を検証
次に高さを60センチに上げて、同様の実験を行うことにしました。60センチというと、ひざ上程度です。今度は“津波”の先端がぶつかった瞬間に、一気に流されてしまいました。体感としても、水が見えた瞬間にはもう水の中にいて、耐えるという次元ではありませんでした。 有川教授によると、さきほどの30センチの場合と比べて、水の力はおよそ4倍になっていて、計算上は100~200キロくらいの力が一瞬でかかることになるといいます。
■“黒い津波”には土砂、がれき、金属片などのほか、細菌や人体に有害な物質も
さらに注目したいのは、水だけでこれほどの威力があるということです。実際に発生したのが、“黒い津波”だった場合は、少なくともさらに10%程度重い上に、衝撃力も強く、浮力も増しています。 中央大学・有川太郎教授 「津波の場合は、周期、波の長さが非常に長いので、流れは5分も10分も続くことがあるだろうと思います。つまり、少しでも流されてしまうと、あとはどこまで流されるかわからないという状態になります。さらに波が後から後から覆いかぶさってきて、上も下もわからず、水の中に引きずり込まれていくということもあります」 震災後、警察庁がまとめた統計によりますと、東日本大震災では死因の90%以上が津波に巻き込まれたことによる溺死となっています。また、気道や肺に土砂が詰まって亡くなっていたというケースもあり、これらは“黒い津波”が影響したとみられています。 実際の“黒い津波”は、水の中に土砂、がれき、金属片などのほか、細菌や人体に有害な物質も含まれています。実は私(小川)はさきほどの体験で、水に流された際に水を飲んでしまいました。実際の津波だったらと考えると、ぞっとしました。
■“黒い津波”は大量の海底土砂を削り取ることで発生
次に“黒い津波”は一体、どうやって発生したのか。その答えを求めて、検証をしている関西大学の高橋智幸教授を訪ねました。 高橋教授は気仙沼湾でのシミュレーションCGをもとに説明してくれました。 関西大学・高橋智幸教授 「津波は湾の狭いところを通る際に、その勢いが強くなります。狭いところを大量の津波が通ろうとするので、結果として、海底を削り取る形になります。一番、削り取られていた場所だと、海底が震災前よりも10メートルくらい下がっていることがわかりました」 高橋教授らのシミュレーションでは、気仙沼湾全体で推計100万トン分の海底が削り取られていたということです。 髙橋教授はもうひとつ注目すべき点があると教えてくれました。津波は第1波、第2波、第3波と繰り返し街を襲います。第1波が海底を削り取り、湾を広げる=津波自身が通りやすい形に変えることで、第2波、第3波と後から来る津波が街を襲いやすくなってしまうということです。 関西大学・高橋智幸教授 「関西にも様々な地形のところがありますので、リアス式海岸に近いような入り組んだところがあります。そういったところでは大きな流れが発生すると思いますので、関西でも黒い津波というのは発生する危険性があります」